かに座
言葉の意味に頼らない
身にしむ
今週のかに座は、『さり気なく聞いて身にしむ話かな』(富安風生)という句のごとし。あるいは、会話や交友をあっさり仕立てることで、かえって心に深く刻んでいこうとするような星回り。
「身にしむ」は、ことに秋風と結びついて、秋の涼やかさを身にしみとおるように、しみじみと受け取る感じ方のこと。
一方、「さり気なく聞いて」とあるので、いちいち感情的になったり、リアクションを表に出さずに、さらりと受けるように聞いている様子だったのでしょう。
そうであるにも関わらず、いやそういう聞き方ができたからこそ余計に、ふだんは忘れてしまっているような心の奥のほうに沈んでいた記憶や感情の領域にまで意識が届いて、そこで響くものがあったはず。
なんとも余韻のある句ですが、これは人間同士の付き合いにも通底していることかも知れません。つまり、ついつい自分の話ばかりしてしまいがちな時だったり、反対に何かと共依存関係に陥りがちな時というのは、どんな話をしていても結局心の浅瀬でちゃぷちゃぷしているだけで、言ってしまえば誰とも何とも大して交わっていないんです。
その意味で、9月3日にかに座から数えて「コミュニケーション」を意味する3番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分の言動を涼やかな秋風に寄せてみるべし。
日本語の<ア>の響き
ことばの発音ということで言えば、子音は気の集中であり、母音は発散であり、また子音は分節にかかわり、母音は連続性にかかわるのだそうです。そして、音楽的には子音はリズム(拍)にかかわり、母音はメロディーないし響きにかかわるのだとか。
森田澄夫の『言葉が声に及ぼす影響』によれば、日本語とイタリア語はともにア・イ・ウ・エ・オという5つの母音を使いますが、日本語の場合は“浅間山”や“荒川”など、<ア>の母音の占める割合がイタリア語などに比べて格段に多いのが特徴で、「浅い言葉」と言えるのだそうです。
逆に言えば、イタリア語の方が、必然的にことばをより強く響かせて相手に伝えようとする積極的な意志が必要とされ、同じエネルギーを発散させるのでも、思いきり集中させておいて発散させるのだと。
つまり、同じ<ア>の発声をするのでも、イタリア語や中国や朝鮮語のそれに近い発音と比べても、日本語は気楽な感じで、それだけことば(音声表現)に頼っているというより、もっと身体の直接的な共鳴に頼っているのだいうこと。
今週のかに座もまた、明確な形を伴わない流動的な気体になったつもりでさまざまなに他者や世界と入り混じっていきたいところです。
かに座の今週のキーワード
もっと全身を使ったエネルギー発散を