かに座
そして馬鹿として
※7月2日配信の占いの内容に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。(2023年7月3日15時11分更新)
「なんとなく」を突き抜けて
今週のかに座は、『逢ひに行く開襟の背に風溜めて』(草間時彦)という句のごとし。あるいは、愚直に誰かを求めていこうとするような星回り。
真っ白な「開襟」のシャツに、一生懸命漕いでいる自転車。まさに青春そのものを見事に活写した一句。彼/彼女が、一体誰に遭いに行こうとしているのかは、この際もうどうでもいい。それより読者であれば、こんなにも誰かと会いに行くのに一生懸命になったことは、最近あっただろうかと、思わずわが身をふりかえって考え込んでしまうはず。
大人になると、いつの間にかこんな風にまっすぐに誰かを求めることを皆やめてしまう。拒否され、スルーされることはもとより、周りに茶化されたり、バカにされたり、慰めるふりをして可哀そうに思われるのが嫌なのだ。日ごろ一生懸命に張っている虚勢が崩れて、なんだか自分の価値が低くなったような気もする。余裕のない顔など晒したら、ここぞとばかりにつけ込まれるだけだろう、ともなんとなく思う。
そう、そんな「なんとなく」に私たちは支配され、封じられて、思いきり手足を伸ばす機会どころか、愚直な心根そのものを失ってしまう。そんなことを思って、掲句に改めて目を通すと、一抹のさみしさを感じる他に、誰にもこんな日があったに違いないという不思議な直感のようなものも差し込んでくる。
その意味で、7月3日にかに座から数えて「他者との関わり」を意味する7番目のやぎ座で満月を迎えていく今週のあなたなら、「なんとなく」のくびきからおのれを解放していくことができるかも知れません。
絶望から始めよう
そんなかに座におあつらえ向きな曲として思い出されるのが、RADWIMPSの「おしゃかさま」。その歌詞の中に次のようなくだりがあります。
馬鹿は死なないと治らない/なら考えたって仕方ない
さぁ来世のおいらに期待大/でも待って じゃあ現世はどうすんだい
(中略)
ならば どうすればいい?/どこに向かえばいい
いてもいなくなってもいけないならば どこに
この曲では、「神様」「来世」「天国」「地獄」などの言葉がこれでもかと使われつつも、それらを作ったのは人間の方であり、そうした人間はきわめて欺瞞的(ぎまんてき)な存在であり、「馬鹿は死なないと治らない」と結論づけられています。
しかし同時に、「僕」は自分が「いてもいなくなってもいけない」とも感じており、たとえ「馬鹿」であるとしても実際に「死」が訪れるまでは「現世」を生きなければならないのだと絶望しているのです。
しかし、そうした絶望は真の意味で考えるということや、何かを愚直に希求することのスタート地点でもあります。絶望してない人にとっては、どう生きるかということは「神様」や“バイブル”が啓示してくれるべき事柄なのかも知れませんが、神様にも絶望している「僕」が発した「ならば どうすればいい?」という問いに誰かが答えてくれることはありえず、言わばその問いに、「僕」は生まれて初めて真剣に苛まれ始めているのだとも言えます。
同様に、今週のかに座もまた、何らかの“死”に至るまでどう生きるべきか、どこへ向かって走り出すべきかを改めて自分の胸に問い直していくべし。
かに座の今週のキーワード
「なんとなく」の囲いを取っ払う