かに座
天に捧ぐ
駆け引きを超えて
今週のかに座は、「求愛のくちばしを打つ雪の檻」(十亀わら)という句のごとし。あるいは、自分なりに情感を昇華させていくことで、誰かを引き込んでいこうとするような星回り。
「檻」とあるので、おそらく、家で飼われている鳥ではなくて動物園にいる大きな鳥なのでしょう。
隣りの檻にいる同種の異性に向けたものなのか、くちばしを鉄格子の合間に差し入れるようにぶつける姿は切なく激しい。
ただ、そこで盛り上がった情動も、最後の「雪の檻」という冷静な俯瞰が添えられることで、それ自体がひとつの挿絵のようになって昇華されていく。
こうした情熱を情熱のままぶつけるだけで終わらない謙虚さこそが、人の心に共感や敬愛を呼び起こす鍵であり、しばしばストレートな表現に向かいがちなかに座にとって最も必要な資質なのではないでしょうか。
その意味で、19日(水)に太陽がかに座から数えて「自己超越」を意味する9番目のうお座へと移っていく今週のあなたもまた、そうして相反するアプローチを取り入れることで、今までの自分の在り方を越えていくことがテーマになっていきそうです。
天に笑ってもらうには
聴く人の心が奪われるのは、歌い手が歌に自分自身そのものを捧げているからであって、その逆に、歌を器用に自分に従わせているからではありません。
あるいは、周囲の笑いを誘うにしても、特定の誰かを下に見て小バカにするような嘲笑をすれば、その場ではみんな笑っていても、帰り道では真顔に戻って身も心も固く閉ざしてしまうでしょう。
その意味で、掲句の作者が鳥の情熱的な求愛に心惹かれたのも、自然とそこに冷たい雪と檻を重ね合わせることができたのも、そもそも鳥がくちばしを打つことで歌った求愛の歌に自分自身を捧げていたからなのかも知れません。
あるいは、つまらない自分やがんじがらめの自我を放りだした時のような「軽み」にこそ、自然と運命は笑いかけるのだとも言えるでしょう。
今週は、人に笑われることを怖れず、何よりも天に笑ってもらうくらいでちょうどいい。そんな心積もりで過ごしていきたいものです。
今週のキーワード
軽く、軽く