かに座
生命力主義的な愛
生命力のぶつかりあい
今週のかに座は、岡本かの子の『花は勁し』という小説のごとし。あるいは、自分の想いをさらけ出すだけの率直さと力強さとを発揮していくような星回り。
生命力に溢れ、男勝りなところのあるお花の師匠を主人公とするこの小説は、どこか破格のスケールを感じさせる作者のいわば生命力主義が端的に提示されている作品と言えます。
谷崎や川端などの日本的とされる作家は、恋愛を季節に応じた自然の移り変わりとどこか通底するものとして捉えていましたが、法華経の信者であり、卓抜な宗教家でもあった岡本は彼らとはまったく異なる捉え方で恋愛を描いてみせたのです。
例えば、この主人公は彼女にお花を習いに来る若い娘たちにある種の同性愛的に好かれて人気があるのですが、実際に恋人にしているのは大人しくてはかなげで生命力の乏しい若い画家の男なのです。
それも、だんだんと主人公の過剰な生命力が男の負担になって、ついには主人公の姪で、かわいがっている弟子でもある、ごく普通の娘とくっついてしまいます。
「生命量の違ふものの間に起る愛は悲惨だ」と主人公が男に話す場面などは、まさに作者のこうした「生命力主義」を象徴しており、いくら主人公が悔しがっても、生命力の落差による恋の破綻がどこか宿命的で仕方のないものとして描かれているのです。
さて、今のあなたの生命力はどれほどのものでしょうか。
今週は自分が発したり、相手を通して対峙している生命力をこそ意識して、過ごしていくといいでしょう。
力強い愛の実現のために
つまりここでは、「愛」というのは異なる生命力がぶつかりあい、ちょうどよくせめぎ合う働きにおいてこそ現れてくるものということ。
関わっている人間関係が特定のタイプだけだったり、何らかの目的のもとに関わっているとあまりにはっきり説明できてしまうようであれば、それはまだまだ力強く燃えるような愛とは程遠いものであるという風にも言えます。
「(悪い意味でなく)何でこんな人と付き合っているんだろう?」とか、「なぜだか説明できない縁を感じるけれど、それはどんな愛の実現を相手の向こう側に見ているからなんだろう?」と不思議に思える相手であればあるほど、そこにはあなたが真っ正直に生命力を燃え立たせていく大いなる足がかりがあるはず。
できるだけそういう相手のことをこそ、大事にしていきたいところです。
今週のキーワード
燃やすべきは業火