おひつじ座
遊離すなわち転生
夢と現が入り混じる
今週のおひつじ座は、「初蝶来(く)何色と問ふ黄(き)と答ふ」(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、白昼夢に取り込まれていくような星回り。
春になって初めての蝶を見かけ、「初蝶(はつちょう)だよ」と声を掛けると、「何色?」と問われ、「黄色」と答えた。そんな何気ないやり取りを、初蝶を見かけたこころの弾みそのままに、スピード感のある口調で一気に詠いあげた句。
初蝶の話題にふれる相手がいること自体が嬉しいのだろうという推測は立つものの、ここで一つ疑問が残ります。すなわち、問いに答えているのは誰かということ。もちろん、普通ならばそれは作者ということなるのですが、初蝶自身が答えているのだとも読めるはず。
その場合、そんな気がしたという白昼夢のような体験とも取れますが、古来より「蝶」はギリシャ語で魂を意味するプシュケーと呼ばれてきたように、それはもはやただの蝶ではなくて、自分自身の魂が蝶となり代わり、胸乳を突き破って遊離している景なのだとも言えるかも知れません。
13日におひつじ座から数えて「アナザーワールド」を意味する12番目のうお座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、これまでの日常と地続きの現実を生きる自分とは別に、もう一つの現実を生き始めつつある自分を見出していくことでしょう。
「うつろい」の感覚
おひつじ座の人たちがこのタイミングで注目しておくべきものは、「うつろい」の感覚と言ってもいいでしょう。
これは「ウツ(空)」という言葉を語幹として生まれた言葉で、空疎な状態になにかがやってきて移っていくことを言います。ついでに言えば、そこでは「移る」だけでなく「写り」や「映り」も起こっており、その情報の相入相関のなかで、「うつつ(現)」が微妙に移り変わっていく。
それは、生命というものが完璧なオリジナルがどこかにあって、定期的に元通りに復元していこうとするのではなくて(それは厳しい自然のもとではどうしても無理が生じ失敗に終わる)、時のうつろいとともに自分もうつろっていき、そこで必然的に生じるゆがみやほころびも遮断しないでいるということを、感覚的によく表しているように思いますし、そこでは生きることは絶えず生まれ変わっていくことに他なりません。
そう、不意に私が黄色い蝶となってしまうように。そうした生まれ変わりのコツやきっかけを、今週改めて思い出していけるといいのですが。
今週のキーワード
てててててててててててててて