みずがめ座
自分をラクにするために
重苦しい空気を換気する方法
今週のみずがめ座は、うつ的事態や状態への処方箋のごとし。あるいは、生きづらさを少しでもラクにしてくれる実践に集中していこうとするような星回り。
「新型うつ」と呼ばれる従来とは異なる患者の出現を論じた片田珠美『一億総うつ社会』が刊行されたのは2011年のことでしたが、うつ病・うつ状態の人の割合が倍増したコロナ禍を経た2024年現在においても、うつ病・うつ状態に関する限り需要と供給がきわめてアンバランスな状況がいまだに続いているように思われます。
そんな中、坂口恭平は『躁鬱大学―気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません―』という本の中で、精神療法の達人として知られる精神科医・神田橋條治の語録を下敷きに、著者本人の実体験によってかみ砕きながら、実践的な躁鬱への対処法を伝えてくれています。例えば著者の提唱する3つの「鬱の奥義」の2番目、「心臓と肺だけがあなたをラクにする」の箇所を1部引用してみたいと思います。
僕は娘と息子が死ぬのが怖いという状態になったときには、深呼吸の方法を教えてます。横になって心臓を落ち着かせて、吸うのを極力減らして、ゆっくり吐く量を増やすように伝えます。それは子供でもできます。そしていちばん効果があります。
心の悩みだと思われるものを治療することが、このように心臓と肺の動きを調整することによって可能になるんです。というか、心臓と肺にしかできません。どれだけ頭や言葉であなたの躁鬱の体質をコントロールしようと思ってもできません。苦手なことはしないようにしましょう。「できることをもっとできるようにする」ことが重要です。心臓と肺だけがあなたをラクにすることができますから、それをもっとできるようにしましょう。
誰にでも分かる平易なことばで書かれていますが、うつ病への移行の兆候である「窮屈」や「疲れ」に対して、もっとも効果があるのは「心臓と肺の観察・処置」であるという指摘はまさに“コロンブスの卵”と言えます。
だって実際に力を抜くと心臓と肺は喜ぶし、うつやうつ状態の人であっても、心臓と肺を喜ばせることならできるじゃん!という著者のスタンスは、「がんばること」や「がんばらせること」がしごく当たり前になってしまっている日本社会の重苦しい空気を換気していく上で、貴重な風穴となっていくのではないでしょうか。
同様に、11月1日にみずがめ座から数えて「世間体」を意味する10番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな風穴をまずは自分の中に開けてみるべし。
霊的な健康
かつて1999年のWHO(世界保健機構)総会において、「健康の定義」をめぐり従来の身体的・精神的・社会的な状態に、「霊的(スピリチュアル)な状態」を付け加えようという提案がなされたもののついに否決されたということがありました。
いまなお「霊的」などと書くと、とたんに胡散臭い印象を持つ人は多いと思いますが、それは本来、前世や守護霊やカルマや救済などのパワーワードと関連するより先に、季節の移りかわりや自然や宇宙の大いなるサイクルと調和した状態を指していたのだと思います。
例えば、昔も今も人類は地上の覇権を争うべく、盛んにいがみ合っていますが、自己保身のためでなく、自分より大切なもののために空に祈りを捧げることを忘れずにいることこそが霊的な健康の秘訣なのです。そして、そういうことを思い出すためには、人はどうしたって痛みや苦しみを通り抜けなければなりません。
今週のみずがめ座もまた、自身自身についてそんな霊的な健康の側面から見つめ直してみるといいでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
心臓が喜ぶような祈る対象をもつこと