みずがめ座
空気感づくり
一体感の熱さ⇔ぬるさ
今週のみずがめ座は、『台風をみんなで待つている感じ』(中田美子)という句のごとし。あるいは、たまたま居合わせた誰かと空気感を共有していくような星回り。
予報で大きな台風が来るらしいと知ると、人びとは食料品を買い込んだり、雨戸をしめたり、庭やベランダに出していた鉢植えをしまったり、逆に雨合羽を出したりと、それぞれ思い思いの仕方で準備をしつつ、ともに台風が来るのを待ち受けることになります。
掲句の「みんな」というのが、単に家族を指すのか、職場や教室単位の仲間を意味するのか、それとも国民全員なのかは分かりませんが、ここで大事なのは「台風をみんなで待っている」のではなく「待っている感じ」であるということでしょう。
つまり、実際にはただ事ならぬ自体であれば台風でなくてもいい訳で、戦争であってもいいし、待ち人がやって来ることであってもいい。ただ、こちらの手に負えないようなものと向きあう時の、みなで息をのんでシーンとなってしまった一瞬の空気感を詠んでいる訳です。
今、そういう空気感が生じうるとすれば、それはいったい何に対して、そしてどれくらいの規模での「みんな」でしょうか。24日にみずがめ座から数えて「仲間意識」を意味する11番目のいて座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした熱い一体感へとふとした拍子に巻き込まれていきやすいかも知れません。
「座」の伝統
一定の土地に集団で定住し、生活圏を自給自足で回るようにしてきた農耕社会を長らく続けてきた日本では、その文化形成においても、和歌における贈答歌や歌合わせなどに顕著に見られるように、創作と享受とが同じ場において営まれ、作者と読者が渾然一体となった共同体単位(「座」)で一連の作品を生み出すという伝統がありました。
例えば現存する日本最古の歌集である『万葉集』。それは和歌が、農耕生活の祭りの場における集団的願望の表現行為として発生して以来、民謡的なものをバックに、個(わたし)と集団(みんな)が一体化し、集団における唱和のかたちをとって展開を重ねられてきたものの結実と言えるでしょう。
そしてその背景には、壮絶な内乱によって大量の敗者や変死者が発生し、その怨念が道という道に溢れているという、凄まじい「滅び」や「喪失」の現実、すなわち「座の異常」がありました。
その意味で、今週のみずがめ座もまた、誰かと心を通わせながら共に一つの作品、一つの文化、一つの響きの形成に参与していくつもりで過ごしてみるといいでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
集団的な唱和としての文化