みずがめ座
自己教育の是非とその行方
ヒューマニスチックであるために
今週のみずがめ座は、「限界状況」を見定めていくような星回り。あるいは、陥りがちな大いなる矛盾を、冷静に突き放していこうとすること。
一兵卒として日中戦争に従軍し、敗戦を上海で迎えた作家の武田泰淳は、そうした自身の経験に基づいて書いた「限界状況における人間について」という評論の中で、次のように述べていました。
戦場における人間は、日常における家庭人とはまったく違った生きものになる。これは戦場に立った体験のない若い世代の人には、容易にのみこめないおそろしいことである。常識をよくわきまえた健全な家長であったはずの自作農が、戦場では、鬼畜のような悪をやってのけることがある。
これは今、ロシアとウクライナの間で起きている事態であると同時に、日本国内でも規模と文脈を変えつつ、これまでも起き続けてきたことでもあるのではないでしょうか。武田は「戦場とは矛盾のかたまり」であり、「常識では許されないことが、そこでは奨励される」とことわった上で、こう続けます。
そこで、私たちは、自分たちを今まで守っていてくれた常識なるものが、いかにたよりない、いいかげんなものだったかを悟るのである。(『滅亡について』)
その意味で、18日にみずがめ座から数えて「調整と準備」を意味する6番目のかに座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、どこまでも精緻に時代や社会と向き合っていくための姿勢を整えていくべし。
脱AI化の必要
最近のイラスト自動生成などの例を見るに、目下グローバル経済は「AIを導入すれば、煩わしい手動作業や人間関係の摩擦を省略し、便利な生活が手に入りますよ」といった消費者への売り込みを劇化させていますが、そうして私たちはなし崩し的に便利さを押しつけられる一方で、その分なんらかの人間としての能力を失いつつあるのではないでしょうか。
AIが普及して当たり前のように生活に浸透すれば、私たちは「命令すればor呼べば、なんでも応えてやってくれる」ことに慣れていくでしょうし、それは逆に言えば、「言ってもなにもしてくれない」という他者への不満を大きくしていくということでもありますし、必然的に他者との関係そのものが分からないという子供も増えてくるかも知れません。
つまり、AIの普及に応じて私たちが迫られていくAIとの共生には、私たち自身が人間としての能力を保ったり、そもそも人間固有の能力とは何かということを再発見したりする必要があり、その前提としてAIと同化してしまわないよう脱AI化を図っていく必要があるということ。
今週のみずがめ座もまた、どういう方向へ自身を教育していくべきか、またしていくべきではないかということを、ひとつ考えてみるといいでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
あのね、人間は機械じゃないからね、ただ命令しても言うことなんて聞いてくれないの