みずがめ座
ひとときの居場所でいい
はるかな海を渡る術
今週のみずがめ座は、『帆柱を便(たより)に渡るつばめかな』(中川乙由)という句のごとし。あるいは、飛び石を見極めつつ、ジャンプを繰り返していくような星回り。
作者は江戸時代の俳人で、もともとは伊勢で材木商をしていた人。「つばめ」は春になると南の国から日本に渡ってきますが、この句を読めばたちまち西国の海道で荷を運んでいた船の映像が浮かんできます。
そうした雄大な遠景と対比させるように、近景の燕たちの姿はどこか健気で可愛らしい。彼らは帆柱を道しるべに、船の帆でいっとき羽を休めながらも、何千キロもの海をこえて帰ってくる訳ですから驚きです。
燕は鳥の中でも飛行する能力を極限まで進化させてきた鳥ですが、それでもこうした大事業を成し遂げるためには、点と点とを結び続けるだけでなく、ときに人の手さえ借りることだっていとわない姿勢さえ必要となってくるのです。
同様に、4月1日にみずがめ座から数えて「ささやかな飛躍」を意味する3番目のおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたにとっても、ひとつひとつは地味に見えても、それを積み重ねたり、数珠のように繋いでいくことで大きな成果をあげることができることを、改めて思い出してみるといいでしょう。
喧噪と帆柱
この世の喧噪や、欲望のもつれを散々経験した後、それに嫌気が差して軽蔑的に振る舞ってしまう人というのはどこでも見かけるものですが、今週のみずがめ座はそうした俗世間や自らの過去の体験に対して、何かしら違った角度からその意味や豊かさを見出していくことができるはず。
それもこれも、ここまでさまざまな過去を乗り越えてきたことで、静謐さや穏やかさを自分の手で作り出していく術を覚えたおかげ。どうにもならないことばかりのこの世界で、多少なりとも自分でどうにかできる領域があるんだという自信を持つことは、夢と現(うつつ)のはざまではためき、ゆれる燕にとっての帆柱のような「ささやかな自分の居場所」を見つけていく上でとても大切なことです。
あるいは今週のみずがめ座は、そうした「自由」ということにまつわるあれこれを改めて実感していく時なのだと言えるかも知れません。
みずがめ座の今週のキーワード
軽みをもつこと