みずがめ座
経験を活かすための模索
開拓民の叡智
今週のみずがめ座は、「冬ぬくし牧場めぐりの汽車の旅」(佐藤念腹)という句のごとし。あるいは、これまでの蓄積を活かす別のやり方を模索していくような星回り。
作者は1927年、29歳のときにブラジルへと移民した人で、サンパウロ州の奥地に住んで原始林の開墾から始め、コーヒー豆やトウモロコシを育て、のちに牧場で牛を飼っていたという。
掲句は移住して20年以上が経過してから詠まれたもので、日本では想像もできない広漠たる土地に生きた人らしく、冬の景色のはずが微塵も寂しく暗い寒々しさが感じられず、むしろ骨太かつ素朴な描写で異郷の生活を伝えてくれている。
というより、それなりの年季が入っていなければ、移民が大地に根を下ろすことなどとてもできないのだろう。そう考えると、最初の「冬ぬくし」もただ物理的な気温のことだけを言っているのではなく、「あの時の苦労に比べたらなんてことはない」といった腹の据わりが前提にあるのかも知れない。
さらに言えば、彼は「汽車の旅」の前に太平洋を横断する船旅を経験し、そこから数多の危機を潜り抜ける中で、腹を育ててきたのだ。
22日にみずがめ座から数えて「血肉」を意味する2番目のうお座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、身に着けてきた力や重ねてきた経験を誰か他の人のために使ったり、新しい方法で活かしていくといいだろう。
照応関係の調整
文化人類学者レヴィ=ストロースは著書『悲しき熱帯』の中でブラジルの都市に触れ、街には西に向かうにつれ発展していくという不思議な傾向があると述べています。恐らくこれは、東から昇って西に沈む太陽の動きの方向に沿うことが正であり、その逆は負であるという宇宙的リズムの現れでしょう。
ただし、太陽神が国家神話の主神である日本においても、既に太陽そのものへの崇拝はなりを潜めています。それでも、人々はみずからを大なる宇宙と照応するひとつの宇宙であるという感覚を失うことはないでしょう。もし都市における精密な呪術的機能が異常をきたしてきたならば、それを補うのもまた人類の役割なのではないかと思います。
呪術という原始人の知恵について、レヴィ=ストロースは「彼らはしばしば、最小の出費で自分たちの知的調和を得るすべを心得ていた」と述べたあと、「音や匂いが色を持ち、感情に重さがあるように、空間は、それに固有のさまざまな価値を持っている。このような対応の探究は、詩人の遊びでもなければ、ペテンでもない」と続けています。
まさにこうした「対応の探究」の経験値こそ、今のみずがめ座に問われているものであり、それを活かしていく道を見つけていくことがテーマなのだと言えるでしょう。
今週のキーワード
都市と呪術の密接な関係