みずがめ座
異なるレイヤーを行き来する
詩と自然
今週のみずがめ座は、さながら都会の中の自然のごとし。すなわち、なくても困らなそうなものによって、自分をチューニングしていくような星回り。
例えば詩や猫なんかもそうですが、この世には合理的にその存在意義が説明できないにも関わらず、「なぜこんなものが?」と思ってしまうくらい人々によって熱烈に大切にされているものがあったりします。
そして大抵の場合、そういうものは現実の異なるレイヤーへの入り口だったり、別の世界へ意識を飛ばしていくために巧妙に配置された装置だったりする。
もちろん、普段は自分のいる世界にとどまってあくせく働いたりしているわけですから、日常においてそういうものは特に役に立ちません。
しかし、そうして何の役にも立たないがために透明な存在になっていくものだからこそ、時に私たちは、そうした存在によって心を休めたり、息が楽にできるようになる。
生活に詩や自然が必要な理由というのは、まさにそういうことなんだろうと思います。
みずがめ座のあなたとしては、まず世界にはいろんなレイヤーがあって、そこを行き来しながら自分は生きているんだということを改めて意識していくぐらいがちょうどいいかもしれません。
たとえば星をみるとかして
池澤夏樹の『スティル・ライフ』は、そうした詩や自然をひとつにして言葉にしていくのが本当に上手な小説で、読んでいるだけで自分がチューニングされていくのがみるみる分かる時があります。
すこし長いですが、以下の引用部分だけでもぜひ読んでみて下さい。
「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐ立っている。
きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。
でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄命の世界を想像してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。
たとえば、星をみるとかして。」
今週のキーワード
透明な存在にアクセスする