うお座
空っぽの肺と深い息
どこでもない場所
今週のうお座は、「年くれてわがよふけ行く風の音に心のうちのすさまじきかな」(紫式部)という句のごとし。そして最後には生身の自分自身だけが残っていくような星回り。
かの一大絵巻たる『源氏物語』に出てくる数々の歌は、すべて作者の紫式部がただひとりで詠んだものでした。あるときは女、あるときは男、またあるときは老人、そして子どもともなって。
そんな稀代の語り手が、登場人物の仮面をとって、素面(しらふ)で詠んでいるのが冒頭の歌。「すさまじき」という古語は「興ざめする」という意味がもっとも知られていますが、ここでは「寒々としている」「物寂しい」という意味でしょう。
年の瀬の夜更け、数々の人物そして人生が通り過ぎてきた心の中は、ただ真っ暗ながらんどうのようでもあり、あるいは、また新たな人生新たな人物の到来を欲している真空が満ちていたのかも知れません。
12月3日の木星やぎ座入り、22日の冬至に続いて、26日(木)にうお座から数えて「宙空からのまなざし」を意味する11番目のやぎ座で日食新月の起きていく今週は、心をいったんこの世のどこでもない場所に置いて、残りの人生で自分が何を為していきたいのかを改めて考えてみるといいでしょう。
息の行き先
いわゆる大往生と言うのは、深く息を吐き切った後に亡くなっていくことが多いそうですが、「息を引き取る」というのは、「潮が引く」のと同じで、「元に戻っていく力が働いている」のだと言えます。
つまり、“もと”の何かに引かれている、あるいは、引っ張っている何かがそこに現れている、ということなのではないかと。
では、この“もと”とは一体なにか? 息を引かれていくということは宇宙に帰るとか、自然に帰るとか、そういうことなんですね。
そうすると、「すさまじき」という情景も、そこには自分を引き取ってくれている何かがあるということになってきます。
あるいは、息を安らかに吐いていくことのできる先というのは、引かれているこちら側と何の抵抗もなくスムーズにつながっている大いなるものの懐の中でもある訳です。
今週は、そうした自分をスムーズに引いてくれる大きな呼吸の中で、息を深く吐けるよう調整していくことをどうか意識してみてください。。
今週のキーワード
声と息の一致