しし座
ほとばしるような情熱の矛先
到来とそのきっかけ
今週のしし座は、「数多なる岬・崎・鼻けぶる夏」(澤好摩)という句のごとし。あるいは、しぶきとなって砕ける怒涛のごとく、感情をほとばしらせていくような星回り。
薩摩半島の最南端に「長崎鼻」という場所があるように、入りくんだリアス式海岸には掲句のような「岬」や「崎」や「鼻」などの海中に突き出ている陸地がそこかしこに見られる風景が広がっていたりします。
夏になれば、怒涛が押し寄せては岬はしぶきにけぶるこうした地形は、古来より遥か地平線の彼方から漂着する神を待つための場所とされましたが、今週のしし座にもどこか自分を圧倒するような何かの到来を心待ちにしていくようなところが出てきそうです。
それはちょうど詩人が遥か彼方から訪れる詩の到来を待っているうちに、不意に何かに憑かれたように指先が勝手に文字を書き始めたりするように。
世界がまるで違ったように見えてきてしまう、そのきっかけを待っているんだろうと思います。
そういえば、長崎鼻は浦島太郎伝説発祥の地でもありましたが、彼もまた今週のあなたがなぞろうとしている体験を生きた元型的人物のひとりと言えるでしょう。
「再統一」ということ
2世紀ローマの哲人皇帝マルクス・アウレリウスは、自ら書き残した『自省録』において、まずこの宇宙について、一なる魂をもつ1つの生き物として考えよと述べます。
さらに、万物がどのようにして一なる感性に帰っていき、またどのようにして一なる欲求からあらゆることをなすに至ったのかを考えよ、と。
つまり、彼にとって宇宙とは、赤ちゃんにとってのお母さんのおっぱいのように、自己をそこから切り離してはならない、すべての根源でありました。そして、そうした宇宙観に立った上で、次のように言うのです。
「おまえは、あの宇宙の本質的な統一から、どこかに自分を投げ出してしまったのだ」
いつだって私たちは、何かを失ってからしかその大切さに気付くことができない。ただし、人間には再び自らの統一を取り戻していく可能性も与えられている。
二度と失いたくないと心から思えるものは何か、今週はきちんと心に問いかけさせすれば、それがはっきりと浮かび上がってくるでしょう。
今週のキーワード
浦島太郎と竜宮城