おうし座
テンポを崩さないように
余計な説明を削ぎ落した文体
今週のおうし座は、庄野潤三の『静物』という小説の一節のごとし。あるいは、多くを語るまいとする凛とした決意を固めていくような星回り。
(妻と)一緒の寝床で寝なかった時は、ほんの少ししかない。何か月くらいだったか。三月くらい。多分、そんなものだ。その時は二人が別々の部屋に寝ていた。彼女は生まれてから一年経ったばかりの女の子と寝ていた。しかし、すぐに終わりになった。あんなことがあった後では、またもう一度もとのように二人は同じ寝床で眠ることになった。それからは、ずっとだ
文中の「あんなこと」というのは、妻の自殺未遂です。その原因は詳しくは書かれていません。というより、この小説は全体を通して、くどくどしい心理描写だとか、話の整合性をとるための下手な説明といったものがまったくと言っていいほどきっぱり削ぎ落されてしまっているのです。
当然、しばらく夫婦別々で寝ていたところに、「あんなこと」があった後にまた一緒に寝るようになった理由も分かりません。また自殺をはからないよう監視する意味もあったかも知れないし、主人公=夫の「家庭を守っていくのだ」という一種のステイトメントかも知れない。
いずれにせよ、ひとつのかたちとして彼は妻と2人で「同じ寝床で眠る」ようになった。その結果だけがぽんと提示されている。それでいいのです。
同様に、19日に自分自身の星座であるおうし座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、ただただおのれの態度と行動を通して何らかの決意を表していくべし。
世俗の言葉はいらない
コミュニケーションには、契約書や裁判のやり取りなど話の中身が第一に考えられねばならないケースがある一方で、話をしている者同士が存在している背景やその抒情性こそが問われていくような場合もありますが、今のあなたはおそらく後者の方を大いに必要としているのではないでしょうか。
そしてそれは「同じ状況でもこの言い方/言い回しがより効果的!」とか「デートで相手を落としやすいお店」いったような、特定の効果を狙ったテクニックや、駆け引きのため方法論といった話とは対極のもの。
そうした勝ち負けなどの分かりやすい二項対立に陥りがちな「私」を主体としたコミュニケーションではなくて、その背後に隠れた「背景」にこそ語ってもらうことで、互いの関係性の中に言葉にはできないような特有の雰囲気が取りこまれていき、その結果としてムードが出来上がっていくのです。
今週のおうし座はそうした無言のやり取りを味わいつつも、人と人、人と事物とが縁や絆を結んでいくことのリアリティーを存分に感じてみるといいでしょう。
おうし座の今週のキーワード
背景同士の語り合い