うお座
影をのぞく
暗がりで蠢いているもの
今週のうお座は、『巣の中に蜂のかぶとの動く見ゆ』(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、まなざしの暴力性のなかに飛び込んでいくような星回り。
まるで断片的に記憶に残っている悪夢のような、決して好んで見たくなるような光景ではないのに、妙になまなましさがある一句です。
「巣の中の」ではなく、「に」で視界がグーっとしぼられ、蜂の硬い頭を「かぶと」に喩えた末に、「見る」の代わりに「見ゆ」が使われることで、意志して見たというより、向こうから意識に飛び込んできたかのような暴力性が出ています。
見えてしまったのは、地下に掘られた巣の暗がりでうごめく頭だけ。さらに「動く見ゆ」と動詞を重ねることによって、狭く閉じられた空間のなかで獰猛な何かがひしめきあっているという、本能的に恐れを感じるような仕掛けがなされています。
そして、鑑賞後には単に怖いものを見せられたというだけでなく、自分もまた確かにそうした獰猛で暴力的な一面をもっているのではないか、という気になぜだかさせられてしまうはず。
その意味で、3月25日にうお座から数えて「密」を意味する8番目のてんびん座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、いつも以上に自分の中の隠れた/抑圧された一側面が露呈していきやすいでしょう。
バッドトリップしないために
なんとなく車の後部座席に乗っていて、ハッと運転席を見ると、自分の嫌っているあいつ、心から憎んでいる存在が運転していた。そういう夢をみたことはある人は少なくないはず。
こうしたビジョンは、自分が生きてこなかった半面である「影(シャドー)」の典型的なイメージと言われていますが、ある意味で、芸術家特有のひらめきというのは、そういう自分の中の嫌な部分、認めなくない側面とどう向き合っていけるかに懸かっているのだとも言えます。
ただし、だからとって今週急にあなたが“いい人”になる必要はありません。
そうではなくて、ああ自分のすぐ横で、嫌な部分、認めたくない側面の自分が意識のハンドルを握って運転していることもある。そういうこともあるのだと、なんとなくでも分かりながら、やっていけるかどうか。
ひらめきを何かしら明日へと生かしていけるかどうかを分けるのは、そういうほんのちょっとした在り方の違いに他ならず、今週のうお座はそこを少なからず試されていくはず。
うお座の今週のキーワード
夢見の習熟