てんびん座
人が宇宙を活かすのだとすれば
人間的尺度を超えてゆけ
今週のてんびん座は、『百方に借あるごとし秋の暮』(石塚友二)という句のごとし。あるいは、古臭さや月並みさの殻を破って「新しさ」にいたろうとしていくような星回り。
「百方(ひゃっぽう)に借あるごとし」とありますから、あちこちにかなりの借りがあって、そのどうにもならない目に見えぬ重荷に対する実感を詠んだ句。しかも作者は平気でそれを踏み倒してゆけるタイプの人間である訳でもなく、かといってすぐにそれらを返せるあてもないまま、机に座って仕事も手につかないでいるといったところでしょう。
普通なら他のことに意識を向けて、それをごまかそうとしてしまうところですが、掲句にはそれがない。状況自体はまったくもってどうしようもないが、それでもと肚を決めて顔をあげた時の度胸を感じる句です。
そしてそれには、「秋の暮」という下五の言葉が、重く全体を受け得ていることが大きく作用しているように思えます。「秋の暮」のような、長い伝統の累積を背負っている言葉は、ともするといかにも俳句的に、“それっぽく”するため安易に使われがちですが、うまく活かせば他に見られないよさが生まれる。掲句の場合は、「秋の暮」という下五にいたるまでに現れた、作者の誠実な人間ぶりが、季語を活かしたわけです。
こうした句を見ていると、自然が人間を活かすばかりでなく、人間が自然/宇宙を活かすということもあるのだと、むしろその相互作用のなかに「新しさ」というものは生まれてくるのだということが、感覚的に伝わってくるはず。
15日に自分自身の星座であるてんびん座の新月から始まる今週のあなたもまた、人間としての誠実さや度胸ということが問われていくでしょう。
人間世界を見つめる動物のように
虫や動物の能力を考えるとき、どうしても人間は人間以外の生物を自分より下に見てしまいがちですが、たとえばハトには1000キロ以上離れた見知らぬ土地から帰ってこられるスキルや、1200枚のスライドを覚える高度な認知能力があることが近年新たに分かってきたのだとか。
いわく、長らくほ乳類特有のものと考えられてきた大脳新皮質に相当する働きをする“外套”と呼ばれる領域が鳥の脳にも含まれていたことが発見され、それとともに動物や脳の基本的デザインを同じくする魚類や両生類、爬虫類などにも、彼らなりの“心”が存在し、そこには人間が想像だにしていなかった豊かな可能性が広がっているのではないかと見られ始めているらしく、例えば、魚類や爬虫類のストレスの感じ方や、神経ネットワークの働きからハエにも意識があることを解き明かす研究もすでに開始されているそう(藤田和生『動物たちは何を考えている?―動物心理学の挑戦―』)。
そして、虫や動物たちの能力がまだまだ新たに発見される余地を残しているように、人間が地球や宇宙にもたらしている影響や貢献もまた、まだまだ新たに発見される余地を残しているのではないでしょうか。
今週のてんびん座もまた、自分が自然を含めたこの世界に対していかに貢献し、何をするべきで何をすべきでないか、できるだけ新鮮な観点から見つめ直してみるといいでしょう。
てんびん座の今週のキーワード
金は借りてもごみは捨てるな