かに座
反体制の精神を宿す
旅と仕事
今週のかに座は、心躍る出張旅行へ出かけていくような星回り。あるいは要請に応えていった異境の地で、思いがけず魅力的な題材や原材料に出会う仕事人のよう。
どのようなものであれ、旅は人間の生命力を喚起し、強める働きがありますが、これは「定住」という一か所に安住している心の在り方に対して、時折「遊牧」の精神を持ち込むことの効用として説いていくこともできるでしょう。
つまり、旅は場所的な移動だけに限定させて考えるのでなく、普段とは異なる人種・風土との交わりや、想像力をまったく別の方向へと展開させていくことも含まれる訳で、極端な話、幽閉中の身であっても、人は自由に自己を旅に遊ばせることができるのです。
今週のあなたは、そうして想像力を刺激されたり、子供のようにはしゃいで回るようなところがある一方で、どこかしら義務や義理の文脈で動いていくという矛盾を抱えていきそうです。
その矛盾をどう上手く取りまとめていけるか、そこが苦しいところでもあり、面白さともなるでしょう。
精神の「東北」へ向かう
年始のかに座の占いに、松尾芭蕉の『おくのほそ道』を取り上げました。芭蕉の旅の最終目的地はその年に式年遷宮を迎える伊勢の地だったのですが、実は旅を始めるにあたって芭蕉がまず東北を目指したことには大きな意味があります。
当時の東北は、かつて栄華を誇った平泉はすでに廃墟と化し、従ってつねに時の権力とともにあった和歌には取り込まれていない、「まだ言葉にされていない自然」であり、そこをみずからの言葉に変えていくことによって、芭蕉は反体制の芸術としての立ち位置を明らかにしていったのです。
さぞかし大変な作業であったろうと思いますが、結果的に芭蕉の『おくのほそ道』のハイライトは平泉までの前半の旅路にあったように思います。
今週のキーワード
出張旅行と異境の地、義務と喜びのはざま、『おくのほそ道』、精神の東北