かに座
非合理的な「夢」に賭ける
かに座にとって2020年は、12年に一度訪れる特別な「リセットと再出発」の時期にあたりますが、後半はさながら「胎児の頃に見ていた夢」をもう一度すくいあげていくかのよう。
解剖学者の三木成夫によれば、私たちはまだ生物のほとんどが水中に生息していた遠い古生代のむかしに繰り広げられた生命進化の壮大なドラマを、母の胎内の“海”に揺られていた十月の間に、“ひとつの夢”として復習し、追体験していくのだと言います。
お腹の中の胎児が、時折り何かを思い出したかのように突然足を突っ張りからだをくねらせるのも、原始以来、海から陸へ、サルからヒトへと、先祖代々試みられてきた「苦難の物語」を夢見ているからなのかも知れません。
そして、今期のかに座のあなたもまた、どこに由来するのか得体の知れない衝動や記憶が心の奥底からむくむくと湧きおこってきやすいはず。
そこでみずからの背景やルーツとスムーズに繋がり直し、既存の自己を超えて新たな生が現実へとせり出してくるかどうかは、ある種の賭けに近いでしょう。
一か八か、丁か半か。普通なら賭け事はしないに越したことはありません。しかし、生き方や人生そのものが根底から揺さぶられ、変動していく今期のかに座ならば、そんな勝負に出てみるのも悪くないと思います。
2020年下半期、各月の運勢
7月「舞台に上がるための覚悟を」
3月下旬からみずがめ座に入っていた「試練と点検」の土星が、7月2日に再びやぎ座に戻ります。これはかに座の人たちにとって、仕事であれプライベートであれ「真に対等な関係を築く」ためにやり残した宿題に取り組んでいく“アディショナルタイム”の始まりと言えるでしょう。土星がみずがめ座へ入るのは12月中旬なので焦る必要はありませんが、代わりにじっくりと腰を据えて、世の中に自分という存在を打ち出していく上で足りないものは何かを問うていくべし。
8月「近くと遠くをかき混ぜる」
8月8日に「愛着と交流」を司る金星がかに座へ移り、18日にはおうし座の天王星と吉角をとります。これは必要に応じてこれまでの人間関係を整理し、不要な関わりをみずから絶ち切っていくには絶好のタイミングとなるはず。逆に、これまで無関係に感じていた相手やクラスターと思いがけないきっかけで繋がりができたり、オンラインなどでの交流が活発化しやすいので、ここで人間関係の新陳代謝をしっかりと促していきたいところです。
9月「計画された偶発性」
9月13日には「意味探しと宗教」を司る木星が順行に戻ります。かに座の人たちにとっては、ここから自分を“ここではないどこかへ”と運んでいく運気の流れが非常に強まっていきます。ここで大切なのは、何事においても自力で頑張ろうとしすぎないこと、そしてちょっとした偶然の出会いやきっかけを大切にすること。特に、他の人からすれば“ただの偶然”であったとしても、“されど偶然”と思い直し、思い切ってそこに頼ったり、飛び込んでいくことも今ならそれほど抵抗なく実行することができるかも知れません。
10月「寝た子を起こすとき」
10月14~15日に「自由意志と創造性」を司る太陽が、「権威的なものの打破と刷新」や「社会的立場の後戻りできない変容」を表す土星と冥王星と激しい角度(90度)を取ります。この土星&冥王星のコンビは2020年の大激変を象徴する配置でしたが、かに座の人たちにとっては、ここで改めて今年1月以降の体験が自分に何をもたらしたのか、特にモチベーションの在り方の変化について光が当たっていくはず。あるいは、眠っていた感情や願望が目を覚ますといったことも十分起こり得るでしょう。
11月「俯瞰的な視点を取り入れて」
11月1日には「変革と刷新」の天王星に対して、太陽がちょうど真向いを運行し、光を当てていきます。かに座にとって、天王星は「仲間や必要な手助け」を意味する11番目の位置関係にありますから、思いがけない視点から今後の中長期的な展望が開けてくることがあるでしょう。あるいは、天王星的な人物、すなわち高度な専門知識をもっていたり、独自のポジションに立っていたりする知り合いに相談してみると、大きなヒントが得られるかもしれません。
12月「一蓮托生、何を選ぶ?」
12月22日には、いよいよみずがめ座で社会性を司る両輪である木星と土星が重なり、これは占星術において、約200年ぶりに時代を動かす基準が「土(モノの豊かさ)」から「風(コトの幅広さ)」へと本格的に移っていく非常に重要な転換点を表します。これはかに座から数えて8番目の「運命共同体と絆」の位置で起きていきますから、これと決めた相手や対象にとことんのめり込み、自分の存在そのものが変わってしまうような奥行きを人生において持てるかどうかが問われていく ことになるでしょう。
2020年下半期、かに座が指針にすべき偉人
「岡潔(おかきよし)」(1901~1978)
数学史に名を残す世界的な数学者であり、多変数解析函数の研究で文化勲章を受章した岡は、一方で名随筆家でもあり、「頭で学問するものだという一般の観念に対して、私は本当は情緒が中心になっているといいたい」「いま、たくましさはわかっても、人の心のかなしみがわかる青年がどれだけあるだろうか」など、しばしば天才的なクリエイティブの現場において何が起きているのかを言葉にしてくれました。
ある種の生まれ変わりの時期にあり、頭が真っ白になってぽかんとしているような状態をいかに過ごしていくかがテーマのかに座にとって、放心状態になる天才であった岡の生き様や残した文章は大いに参考になるのではないかと思います。