さそり座
不完全である勇気を
さそり座にとってここ10年ほどの運気の流れの「収穫期」である2020年も下半期に入ってくるといよいよ大詰め。これまで培ってきた知恵と経験を存分に用いて、いよいよあなたなりの「生き方の旗印」を形にし、浮かび上がらせるのです。さながら、熟達した彫刻家が大理石にノミを打ち込むことで彫像を掘り出し、ひとつの作品にしていくように。
それはある人にとっては“人望を集めること”であり、また別の人にとっては“義理を果たすこと”であったり、またミケランジェロのように“美の追求”であったりする訳ですが、そこで大事になってくるのは、「不完全である勇気」をいかに持てるか、ということでしょう。
古都フィレンツェにはミケランジェロの数多くの未完の大作が残されていますが、彼は無類の完璧主義者として知られていました。つまり、一度完成までこぎつけても納得せず、何度も何度も作りなおしていくうちに、ついに未完のまま終わってしまった訳です。
これは、ある意味で今期のさそり座が反面教師として心に留めておくべき教訓でもあり、完璧を求めすぎてそのまま腐らせてしまうのではなく、たとえ不完全であったとしても、あえて対外的に打ち出していく姿勢を大切にしていきたいところ。
例えば、岡倉天心は『茶の本』において、茶道の奥義を「不完全なものへの崇敬」にあると述べましたが、それは「人生という不可解なもののうちに、何か可能なものを成就しようとするやさしい企て」であるからだと喝破しています。これはまさに今期のさそり座が指針とするべき言葉と言えるのではないでしょうか。
2020年下半期、各月の運勢
7月「サバイバルのための基礎訓練」
3月下旬からみずがめ座に入っていた「試練と点検」の土星が、7月2日に再びやぎ座に戻ります。これはさそり座にとって、“生き延びるための武器”をもう一度練り直していく最後の仕上げに入っていくのだ、ということを表しています。資格や仕事上の専門知識に限らず、昔から苦手意識があったことや、専門外の教養など、ひとりの人間としての底力を総合的に引き上げるためなら何でも取り入れて、この不安な世界を生き延びていく上での基礎訓練を完了させていきたいところです。
8月「生きた交流こそ最良の学び」
8月8日に「交流と感受性」を司る金星がかに座へ移り、18日にはおうし座の天王星と吉角をとるさそり座は、プライベートであれ仕事上であれ、パートナーからの影響を通して自分の世界が広がりやすいでしょう。基礎訓練からいきなり応用編に入っていく感は否めませんが、意見を多く交換し、議論をすればするほどに、あなたはこの世界に対する新鮮な興味と感性の鋭さを高めることができるはず。生きた交流こそ、私たちが人生を通して得られる最良の学びなのだということを改めて実感するタイミングと言えます。
9月「冒険者のごとく」
9月13日には「意味探しと宗教」を司る木星が順行に戻ります。さそり座の人たちにとっては、ここから一気に内と外とを隔てていた“門”が解放されていきやすいでしょう。さながら、冒険の旅に出たハックルベリー・フィンのように、未知の世界をどこまでも探索したいという気持ちも強まるはず。この世にはまだ自分の知らないことの方が多いのだということを忘れずに、行動範囲を積極的に広げたほうが良い時です。
10月「突如心の底から湧いてくるもの」
10月14~15日に「創造性と情熱」を司る太陽が、「権威的なものの打破と刷新」を表す土星&冥王星と激しい角度(90度)を取ります。この土星&冥王星のコンビは2020年の大激変を象徴する配置でしたが、さそり座にとっては、これまで自分では意識していなかった動機や心のはたらきが深いところから湧いてくるはず。例えば、心に残る本を読んだり、料理をしている時に、突然人生の喜びを感じるかも知れませんし、両親に対する本当の気持ちが夢に現れることもこの時期には珍しくありません。その感覚を大事に活かせれば、あなたの創造性はますます高まっていくでしょう。
11月「電気ショック的な関わり」
11月1日には「未来を創る力」を司る天王星に対し、さそり座を運行している太陽がちょうど真向いに来て、光を当てていきます。ここでは特に、天王星的な人物、すなわち高度な専門知識をもっていたり、独自のポジションに立っている知り合い、時には扱いが難しいトラブルメーカーが鍵となって、大いにその影響を受けることになりそうです。場合によっては、相手に振り回されて疲れてしまうこともあるかも知れませんが、その分そこで得られる刺激は強烈なものとなっていくでしょう。
12月「土地に縛られない生き方を」
12月22日にはみずがめ座で社会性を司る両輪である木星と土星が重なり、約200年ぶりに時代を動かす基準が「土(モノの豊かさ)」から「風(コトの幅広さ)」へと本格的に移っていきます。これはさそり座から数えて4番目の「活動基盤と家」の位置で起きていきますから、「どこに落ち着くかorいかに住まうか?」といったテーマに対して何らかの形でしがらみがほどけることも。あるいは、海外との縁ができやすい人も多いはずです。
2020年下半期、さそり座が指針にすべき偉人
「岡倉天心」(1863~1913)
急激な西洋化の荒波が押し寄せた時代の流れの中で、日本の伝統美術の優れた価値を認め、美術運動家としてボストン美術館の中国・日本美術部長就任、東京美術学校(現・東京藝術大学)の創立、英文での評論著作など、近代日本美術の発展に大きく寄与しました。しかし、その文章には、西洋文明に対する強すぎるコンプレックスの影などもうかがえ、その胸の内には絶えず複雑な思いがあったはずです。
日本に関する独自の文明論として『茶の本』を書いて西洋人に茶の湯の精神を伝えようとした著者は、まさに様々な思いが錯綜する中で自分なりの信念や哲学を抽出していかんとする今期のさそり座にとって、不思議と親近感の湧く人物なのではないでしょうか。