おうし座
「利己」と「利他」のあわいに立つ
2020年のおうし座は、今後10年ほどのスパンで自分なりの活動や生き方を展開していくための“基盤づくり”の最中にありますが、下半期に入ってくると、特に重要になってくるのが「生きがい」でしょう。
本当に生きている、という感じをもつためには、生の流れはあまりになめらかすぎるより、多少の抵抗感や乗り越えるべき試練が必要となります。そして、おうし座がそうした生存充実感を最も感じていけるのは、他者を喜ばせ、献身できる時であるはず。
というのも、おうし座の本質的テーマである「“持続的な豊かさ”の実現と享受」は、利己主義と利他主義のあわいにおいてこそ成立していくものだから。
精神科医の神谷美恵子は『生きがいについて』の中で、「生きがいを感じているひとは他人に対してうらみやねたみを感じにくく、寛容でありやすい」と述べていますが、それは裏を返せば、他人に認められようとなかろうと、自分が他の誰かを支える力となっているという強い確信を抱けているからに他なりません。
自分のためと、誰かのため。2020年下半期は、そのいずれかではなく、両方の面から「自分は何のために生かされているのか」という問いに向き合っていきたいところです。
2020年下半期、各月の運勢
7月「アイデアや思いつきを哲学に」
3月下旬からみずがめ座に入っていた「点検と再構築」の土星が、7月2日に再びやぎ座に戻ります。これはおうし座にとって、ここ2年半ほどのあいだに取り入れてきた新たな考え方や習得してきた学びに対し、あらためて仕上げをしていかねばらないということを表します。あるいは、堂々と自らの信念や立場を掲げ、新たな世界に飛び出していくにあたって、自分に決定的に足りていなかった“最後の1ピース”を見つけ出し、はめていくことになるはず。
8月「変化のフィードバック」
8月8日に「魅力と愛情」を司る金星がかに座へ移り、18日にはおうし座の天王星と吉角をとります。これは関わっている相手からのリアクションを通して、自分自身の変化への自覚が促されてきやすいタイミングと言えます。自分では気付いていなかった隠れた魅力や、以前とは決定的に変わってしまった側面について認識が確かになるにつれ、あなたの周囲との関わり方もまた自信に満ちて、輪郭がよりはっきりと明確なものになっていくでしょう。
9月「腑に落ちて体巡るもの」
9月13日には「発展と拡大」を司る木星が順行に戻ります。おうし座の人たちにとっては、7月に始まった信念の体系化や自分なりの哲学を持つための仕上げ作業に対し、ここから追い風が吹いていくでしょう。さながらかつて土地の老人から教えられた言葉が急に腑に落ちるようになっていくように、どこか抽象的に捉えていた特定の文化や教えが血の通ったものとして感じられるはず。とはいえ、小難しいことはさておいて、改めて自分を超えた大いなるものの一部である感覚を大切にしていきたいところです。
10月「働き方が変わっていく時」
10月14~15日に「生き方と創造性」を司る太陽が「社会的立場の後戻りできない変容」を表す土星&冥王星と凶角(90度)を取ります。この土星&冥王星のコンビは激動の2020年を象徴する配置でしたが、特におうし座にとっては、働き方や仕事内容へのテコ入れや意思決定が強く促されるでしょう。軸となる思想信条が変わってくれば、それに伴って仕事の仕方も自然と変わっていくもの。自分は何のためにどんな形でそれに貢献できるか、逆にどこからは手を引いていくべきなのか、ぜひこの機に自問してみるといいでしょう。
11月「顔に手を当ててみる」
その年代ごとの“イノベーション精神”を表す天王星に対し、11月1日には太陽がちょうど真向いを運行し、光を当てていきます。天王星は2018年頃からおうし座に入った訳ですが、これはおうし座にとって自分の“顔”や周囲への“姿勢”が以前とは大きく変わってきつつあることを示しています。ただ、それはリアクションが返ってこなければなかなか自覚しづらいものでもあります。その意味で今月はこの2年のあいだに起きてきたあなたの変化に対するフィードバックが寄せられてきやすいはず。しっかりと受け止めて、古いセルフイメージをどんどん壊していきたいところ。
12月「一人前の定義を問う」
12月22日には、いよいよみずがめ座で社会性を司る両輪である木星と土星が重なり、約200年ぶりに時代を動かす基準が「土(モノの豊かさ)」から「風(コトの幅広さ)」へと本格的に転換していきます。おうし座にとっては「使命や社会的役割」を表す10番目の位置関係で起きていきますから、「仕事が充実してこそ一人前であり人生だ」という意識は今後ますます高まるでしょう。あるいは、自分を社会的にも精神的にも引き上げてくれるような目上の人物や実力者との関わりが命運を左右するカギとなるはず。
2020年下半期、おうし座が指針にすべき偉人
「神谷美恵子」(1914~1979)
津田英学塾に在学中にハンセン病を初めて知って、医学部進学を決意し、30歳で精神科医となった人。過酷な環境にありながら生きる気力を失わず、希望を見出せる人のうちにある「生きがい」の在り様について深く洞察していき、『生きがいについて』という1冊の本にまとめていきました。
他に、「美智子皇后の相談役」「戦時中の東大病院精神科を支えた3人の医師の内の一人」、「戦後にGHQと文部省の折衝を一手に引き受けていた」など、伝説的なエピソードにも事欠かない人でした。彼女ほど「利他と利己のあわい」ということを考え抜いた人も他にそうそういないでしょう。その意味で、いま改めておうし座に知っておいてほしい人物の筆頭と言えるのではないかと思います。