しし座
暗い場所をくぐり抜ける
いよいよこれまでの12年の締めくくりを迎え、ここで放棄していくべきものと、次の新しい12年サイクルに引き継いでいくべきものとを、しかと見極めていかねばならないのが2020年下半期のしし座。
そしてそれはかつてダンテが若くして失脚し、生きる術をすっかり見失ってしまった時に『神曲』を書いて、絶望を乗り越えていった過程ともどこか通底しているように思います。
『神曲』の主人公は執筆当時35歳のダンテ本人であり、人生の道半ばで道に迷っていたダンテはローマ時代の大詩人ウェルギリウスの魂(影)と出会い、彼に導かれて亡霊たちとなんとか会話を交わしながら、地球の中心部である地獄の底まで到達していきます。
ウェルギリウスの魂は、ダンテがその道すがら心が挫けそうになる度に「さあ立て、もしおまえの魂が肉体の重みに耐えるなら、あらゆる戦闘に打ち克てるはずだ、その魂の力で呼吸困難に打ち克て」(平川祐弘訳)などと発破をかけ、初志を貫徹させていくのですが、そうした後押しこそ、今期のしし座がもっとも必要とするものでしょう。
やがてダンテは、煉獄の山頂で罪穢れをすっかり祓い清めたところでウェルギリウスに別れを告げるのですが、それこそ今しし座が目指すべき到達地点なのだとも言えます。
「夜明け前が一番暗い」などと言いますが、よく目を凝らせば、そこには必ず登りくる朝日を先導する恒星が輝いて見えているのだということを、忘れず思い出していきたいところです。
2020年下半期、各月の運勢
7月「改めて生活習慣の見直しを」
7月2日に3月下旬からみずがめ座に入っていた「点検と再構築」の土星が、再びやぎ座に戻ります。これはしし座にとって、もう一度生活リズムを見直したり、健康管理を徹底していく必要性が生じてくることを表します。ひとりの自立した人間として、どうしたら最大限にパフォーマンスを発揮できるのか、また仕事量の限界をどのあたりに設定すればいいのか、生活の些細な側面まで目を光らせていきたいところ。そうした細やかなケアの積み重ねこそが、社会的な信頼に繋がってくるのです。
8月「一歩も二歩もはみ出る勇気」
8月2日にしし座を運行中の太陽が、「未来を作り出す力」を表す天王星と力強く交わっていきます(90度)。天王星はそう簡単に使いこなせはしない難しい秩序破壊的なエネルギーですが、あなたの意識が今よりもっと先、これから来る“新たな未来”へと向いたときには、独特のビジネスセンスや、とがりまくった企画力として発揮されます。ただ単に既存の成功法則や勝利の方程式に従うだけではなく、時にはそれに歯向かってでも新しい試みに身を投じていくべし。
9月「仕事の幅が広がる流れ」
9月13日には「発展と拡大」を司る木星が順行に戻ります。しし座にとっては、ここから仕事の幅をどんどん広げていく流れに入っていく人も多いはず。ただしオーバーワーク気味にもなりがちなので、そこは注意が必要。頼まれ事も背負い込みやすいため、貴重で限られた自分のエネルギーを割くべきオファーなのかどうか、いつも以上に厳しく精査して、少しでも違和感を感じたらバッサリ断ること。7月からの試行錯誤を踏まえ自分の“分”や“身の丈”を少しやりすぎなくらいに守っていくべし。
10月「徹底的な没頭」
10月14~15日に「情熱と創造」の太陽が、「社会的立場の後戻りできない変容」を表す土星&冥王星と激しくぶつかり合っていきます。この土星&冥王星のコンビは激動の2020年を象徴する配置でしたが、しし座の場合、自分の才能を活かせて没頭できる仕事や活動に携われれば、ここで一気にその道の第一人者になれる可能性も。どんなにニッチなものであったとしても、自分が情熱を注ぎ込めるものであるなら、全力で取り組んでいきましょう。
11月「信念を伝えていくべし」
11月14日には“対外的な自己主張”を司る火星が、逆行期間を経て2カ月ぶりに順行へ。ここから火星がおうし座へと抜ける正月明けまでは、しし座にとって自分の思想や信念を人に伝えていく上では絶好のタイミングとなっていくでしょう。あるいは、高度な専門知識を習得したり、レベルアップをはかっていくのもいいかも知れません。ただし、活かされるスケールが小さくなってしまうと、どうしても“怒り”の感情とつながりやすくなってくるので注意したいところ。
12月「パートナーシップのカタチが変わる」
12月22日にはいよいよみずがめ座で社会性を支える両輪である木星と土星が重なり、これは約200年ぶりに時代を動かす基準が「土(モノの豊かさ)」から「風(コトの幅広さ)」へと移る非常に重要な転換点を迎えたことを表します。特にしし座にとっては「パートナーシップの在り方」がこれまでと180度変わっていきやすいでしょう。プライベートであれ仕事であれ、これまでは現実的ではないと密かに思い描いてきた関わり方や関係性の築き方も一気に許容されやすくなっていくので、アイデアを出し合って色々とトライしてみるといいでしょう。
2020年下半期、しし座が指針にすべき偉人
「ダンテ・アリギエーリ」(1265~1321)
イタリア都市国家フィレンツェ出身の詩人、哲学者、政治家。祖国で国務大臣について政治の中枢を担った後、政変に巻き込まれ若くして祖国を永久追放され、北イタリアで放浪生活を送っていた時、自らを主人公として死後の世界を旅する壮大な叙事詩『神曲』を執筆。本書はしばしば過去千年における西洋古典の最高傑作とされています。
地位も名誉も世の価値観や毀誉褒貶なんてものは、あっという間に移ろう虚しいもの。そんな楽しくも苦しい「魂の危機」を通過していく今期のしし座にとって、ダンテはその設定だけでも、とても他人とは思えない存在なのではないでしょうか。転んでもただでは起きないその姿勢は、大いに参考にしていきたいところです。