おうし座
地下茎のごときつながり
血を分かつは誰ぞ
今週のおうし座は、「血脈」に命を吹き込んでいくよう。あるいは、自分自身をより力強く養ってくれるような繋がりや結びつきを辿りなおしていこうとするような星回り。
歴史学者の西田知己によれば、もともと日本では古くから神道の影響から血は穢れであるという不浄観が強かったのですが、江戸時代に血統が皇統と重ね合わせて解釈されるようになり、それをきっかけに穢れよりも生命力を感じさせる新たな「血脈」概念へと読み替えられていったのだそうです。
例えば平田篤胤(1776~1843)は「御血統」と「御正統」をともに「オホミスヂ」と読ませるなど、皇統に対して単なる「血脈」以上の格付けを試みましたが、それが結果的に幕末期の尊王攘夷運動にも取り入れられていったのだとか。
西田はこれを「イエスの『値高き御血』以来、もっとも高位に置かれた『血』認識であった」と述べ、明治維新以降に国家神道が形成されていく経緯においてさまざまな要因が連動していたにせよ、江戸時代に血筋の「血」が登場したこともその前史の一端だったことを指摘した上で次のような非常に興味深い視座を提起しています。
明治社会は、文明開化や富国強兵といったスローガンにより、欧米社会に追いつくことを目標にしていた。最終的には、欧米社会と対峙する構図も生み出された。その当時の政治や社会の精神的支柱となった皇統の解釈に、西洋渡来の「血」の思想が潜んでいたと考えてみるのも興味深い。西洋思想の力も借りて、西洋世界に相対したようにも見えるからである。(『血の日本思想史―穢れから生命力の象徴へ―』)
こうした血縁について、現代の日本社会は民法の第七百二十五条一号に基づいて「六親等内の血族」というきわめて限定的な定義が与えられるのみですが、その思想史的な射程を鑑みるに、血脈には空間的にも時間的にも本来結びつきえないような要素を結びつけることで、個人ないし集団に生命力を与えては、力強く養っていくという大きな役割を果たしてきたのではないでしょうか。
7月12日におうし座から数えて「存在の基盤」を意味する4番目のしし座に金星(平和と調和)が入っていく今週のあなたもまた、血を分かち合っていると感じられるような存在を求め、繋がりを辿りなおしていくことがテーマとなっていきそうです。
蓮の花となること
仏典によれば、かつてゴータマ・ブッダは母・摩耶の胎内から出て7歩歩き、蓮の花の中に立って、「天上天下唯我独尊」という第一声を放ったと言われています。
ただし、これはよく言われるような自分より優れたものなどないという傲岸不遜な思い上がりなどではなく、この世に個として存在する「我」より尊い存在はないというすべての人間が本来備えている尊厳への確信に貫かれた言葉。
そして、蓮の花とはそんな尊厳にみちたブッダを支える玉座、すなわち「背後から支える力」として彼の聖性と分かちがたく結びついています。
つまり、ひとが本来の尊厳を取り戻していくためには、まず自分にとっての「蓮の花」を見つけていく必要があり、先の「血脈の再確認」とはそうした蓮の花を開花させていくことにも繋がっていくのではないでしょうか。
今週のおうし座は、そうした自分に可能な秘やかな配慮や後ろ支えにこそ焦点をあてていきたいところです。
おうし座の今週のキーワード
背後から支えられるための準備と手続き