さそり座
こんな夢を見た…
木村蒹葭堂のサロン
今週のさそり座は、「私しない」という美意識のごとし。あるいは、自分や自分の持っているものを社会に向かって開いていこうとするような星回り。
江戸時代において尊ばれた、「私しない」ことを守ればそれでいい、という価値観は、言ってみれば自分の財産、才能、家族、仕事、立場、地位などを自分のためだけに使わず、世間のために使うよう心がけることを意味していました。
例えば比較文化研究家の田中優子は、そうした価値観を体現していた人物として、大阪の酒造業者をしていた木村蒹葭堂(けんかどう)を挙げています。彼は偉大な哲学者や厳しい修行僧であった訳ではありませんが、彼のもっている本草学の書物や庭で育てているさまざまな植物やコレクションを見たり、珍しいお茶を飲んだり、何より彼と知的な会話をするために、彼の家には毎日いろんな人が訪れたのだそうです。
酒を造る以外何をした人か、と問われると困る。何もしなかったようでもあるし、あまりにも多くのことをしたようにも思える。歴史に何の足跡も残さなかったようにも見えるし、時代に大きな影響を与えたようにも見える。(田中優子『江戸百夢―近世図像学の楽しみ―』)
つまり、蒹葭堂はただの好事家ではなく、根っからの「私しない」人間であり、人びとは彼を通してつながり合い、ある種の人格的影響を受けていったのだと言えます。
その意味で、7月12日にさそり座から数えて「世間との折り合い」を意味する10番目のしし座に金星(平和と調和)が入っていく今週のあなたもまた、少なからず世間の媒体になりきってみるよう促されていくことでしょう。
楽しませること
フランスの哲学者のアランは幸福に関する断章集のなかで、「ほんとうの生き方」の中に「楽しませるべし」という規則を入れたいという旨について書いていました。
それはおべっかを言ったり、調子よく相手に合わせるということではなくて、(とりわけ若者に対しては)推測に過ぎないときは最も良い方にとり、立派な姿に描き出すことで、彼らは自然と自分をそのように思い込み、やがてそのような人間になるだろうといった未来への企図に基づく祈りにも似た行為なのだと。
もちろんどんな人にだって誤りやねじれは存在するものですが、厄介なのはそれを感情的にこじらせることであり、ここでいう相手を「楽しませる」とは、「つまり荒ぶる情念をなだめる体操」なのであり、アランの言う通り「ほんとうの礼儀作法とは、むしろよろこびが伝わって行って、すべての摩擦がやわらぐところにある」のかも知れません。
今週のさそり座もまた、みずからの実践すべき行動規則やその影響について改めて見直し軌道修正していくことがテーマとなっていくでしょう。
さそり座の今週のキーワード
ほんとうの意味で礼儀正しさとは何かの定義とその実践