さそり座
未知に開かれて
詩人は何も持たない
今週のさそり座は、明快な判断や評価を下さず、それらを宙ずりにし続けるジョン・キーツのごとし。あるいは、「ネガティブ・ケイパビリティ」という引き出しにグッと手をかけていこうとするような星回り。
今ほど性の規範の見直しが力強く叫ばれることのなかった時代に、男性でありながら女性的な精神を宿していた特異な人物の一人に、26歳で夭逝したロマン派詩人のキーツがいます。彼は詩人には、価値判断を保留して宙ずり状態にし続ける能力、すなわち「ネガティブ・ケイパビリティ」が必要なのだとして、次のように述べていました。
詩人はあらゆる存在の中で、最も非詩的である。というのも詩人はアイデンティティを持たないからだ。詩人は常にアイデンティティを求めながらも至らず、代わりに何か他の物体を満たす。神の衝動の産物である太陽と月、海、男と女などは詩的であり、変えられない属性を持っている。ところが、詩人は何も持たない。アイデンティティがない。確かに、神のあらゆる創造物の中で最も詩的でない。自己というものがないのだ。(『ネガティブ・ケイパビリティ』)
詩人は確たる地位や年収やフォロワーなどの分かりやすい指標を持ち併せていないがゆえに、かえってそれに代わる何かを必死に模索することになるが、その過程でおのずと不確かさや、神秘的なこと、疑惑ある状態の中に留まり続ける力が求められていく。
そうした力に習熟していくためには、訳の分からないことや、とりつくすべもない事態を前にした時のすっきりしない気分に何度も、深く耐えていかねばならないのです。そして、そうした許容力が必要な事態は、時代が進むほどに多くなってきているように思います。
4月2日にさそり座から数えて「スキル」を意味する3番目のやぎ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、すぐに何かを「分かった」状態に持っていく力(ポジティブ・ケイパビリティ)の代わりに、分からない状態でいられる力をこそ発露させ、磨いていくことの大切さに改めて開かれていくことになるでしょう。
詩人の魂
19世紀を代表する詩人の一人であるランボーは、ある手紙の中で次のように書いています。
詩人になろうと望む人間の探求すべきことの第一は、自己自身を認識すること、それも全面的に認識することです。自分の魂を探索し、綿密に検査し、誘惑し、学ぶことです。自分の魂を知ったら、すぐにそれを養い育てなければなりません
これは簡単なようでとても難しいことです。というのも、そうして育てた魂は<まったく未知なもの>でなければならぬ、と彼は考えていたようですから。
自分にとって<まったく未知なもの>としての魂とは、また多くの人のうちで「目覚めつつあるもの」でもあり、それについて別の箇所ではこう書いています。
詩人は、その時代に、万人の魂のうちで目覚めつつある未知なものの量を、明らかにすることになるでしょう
今週のさそり座もまた、いま自分が何に触れているのか、それについて向き合っていく中で、詩人の魂を育てていこうとしているのかも知れません。
さそり座の今週のキーワード
不運は幸運の在り処を指し示す