やぎ座
いきりすぎるなかれ
戦わない知性
今週のやぎ座は、ストレスに対する地味な戦略提案のごとし。あるいは、なにかと好戦的になるよりも「やりすごし」、「生き延びる」ことを選んでいこうとするような星回り。
精神科医の中井久夫は『ストレスをこなすこと』というエッセイにおいて、やはり人類が共通して抱える問題としてのストレスに対し、同様の戦略を提案しています。
「ストレス解消法」は、何にせよ、一時しのぎと考えて、「ストレス感」がなくなるまで徹底的に追求しないことです。追求すると、むしろ、むなしい感じが生まれ、これは全然消えません。
人事の人はよく「三日、三十日、三カ月、三年」といいます。就職してから退職を申し出るまでの期間です。こういう時期は、生理的にやめたくなるらしいので、休暇を取るとか少し仕事の気を抜いてでもいいからやり過ごして、それから考えてみるのがいいでしょう。
仕事にせよ家事にせよハイキングにせよデートにせよ、四十分単位、二時間単位で計画するのがかしこいと思います。四時間もぶっつづけでやったら、「おもしらうてやがて悲しき鵜飼かな」(芭蕉)ということになります。
こうしたいっけん地味な提案の数々が、いったいどれほど人びとに抵抗力を与え、生存に寄与してきたかは、実際に試してみればすぐに分かることでしょう。危機においては、威勢がよかったり、声高に叫ぶだけではダメなのです。
4月2日に自分自身の星座であるやぎ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、何か誰かと張り合い、「戦う」ことをやめることで、かえって抵抗力を高めていくという戦略を自分の身に寄せて実行してみるといいでしょう。
発散空間としての廃墟
3.11の震災のあとに多くの若者がボランティアに集まり、個人差こそあれみなある程度のレベルでいきいきとしていったのは、そこにやりがいや自己貢献感を見出したからではなく、どこにも発散のしようがなくて鬱積していたエネルギーを一挙に発散できる「廃墟」があったからではないでしょうか。
というのも、社会というのは高度にシステム化していくほど、そこで暮らす人がシステムに依存的になっていくため、自分とシステムが不可分となって何の負い目もなく無邪気に体制批判することができなくなってしまう。
日本では歴史的に真の意味で「革命」を経験したことはありませんから、どうしてもそれに類するものを社会がゆるしてくれない。おのずと、エネルギーがたまっても、飛びつくものが不在のまま、ただ体だけが息苦しくなっていきやすい訳です。
ただ、今の社会状況ではこれまでの日常がどんどん非日常化していますから、ある種の人たちにとって解放感が得られやすい状況になってきているのだとも言えます。今週のやぎ座においても、そうしたエネルギーの発散をどうのようにこまめに持てるかということがテーマとなっていきそうです。
やぎ座の今週のキーワード
自分自身をある種の「焼け野原」化していこうとすること