かに座
逆算に偶然をまぜていく
秋風は未来への準備を促す
今週のかに座は、『おもひ出て酢つくる僧よ秋の風』(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、「風が吹いたら桶屋が儲かる」ような流れを自身で体感していくような星回り。
山寺のお坊さんが、秋の風を感じながら酢をつくっているのだという。「おもひ出て」というのは、急に思い立ってということですから、なんとなく涼やかな気配を感じて、「あ、今日は酢をつくろう!」となっていそいそと仕込み始めたのでしょう。
今ではお酢はほとんど工場で作られスーパーなどで買うものというイメージがありますが、昔はみな家でつくっていました。余ったご飯があったら、それを発酵させていたんですね。こういう風に、秋風というのは食材を発酵させて保存食にしたり、魚なんかを干したり、さらにそれを市へ売りに行ったり、何かと人びとを冬場の準備へと向かわせていくきっかけのように働くところもある訳です。
そうなると、ともすると気持ちは先へ先へとはやるものですが、掲句では「酢つくる僧よ」という言い方で、何やら夢中になって酢づくりに取り組んでいる僧の“現在”に焦点が寄せられています。
同様に、15日にかに座から数えて「楽しみごと」を意味する3番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、先々の事態に向けた準備を始めつつ、目の前の工程ひとつひとつをできるだけ楽しんでいきたいところです。
ターミネーターの登場シーン
人や物が大いに動く「あきない」を語源にもつ「あき」に季節が移ってくると、高く澄んだ青空が身近に感じられて、まるで、通り抜けられそうに感じられてくることがあります。
自分が空の向こう側の世界へ突き抜けてしまうのか、それとも、青空を突き抜けてこちらの世界になにか未知のものがすっと訪れてくるのか…。秋風というのは、そういう隙間から吹いてくるのです。
そういえば、ターミネーターもそんな感じで、ゴミの散らばった路地裏にまばゆい電光とともに何の脈絡もなく降り立ったものでした。映画の内容を知っている人であれば、アーノルド・シュワルツェネッガー演じるその筋骨隆々の全裸男が、人類と機械が熾烈(しれつ)な戦いを繰り広げられている近未来において、人類反乱軍のリーダーとその母親を抹殺するため、過去世界へ転送された殺戮マシーンであることは知っていよう。
けれど、それもすべては後付けに過ぎず、当のその瞬間には、ただ全裸男が突然そこに出現しただけだったはずですし、彼と一緒に少年がどんな時間を過ごすかが、未来へいかなる影響を与えるのかは未知数だったはず。
今週のかに座もまた、そんな映画『ターミネーター』が展開される現在にたまたま居合わせたくらいのつもりで過ごしてみるといいでしょう。
かに座の今週のキーワード
「I'll be back」