春は、出会いも別れもあり、感情の振り幅が大きい季節。
今回ご紹介する小説は、そんな「人との繋がり」をテーマにした作品です。
なんだか人にやさしくなれる、周りの人を今よりももっと大切にしたくなる…そんな新しい気持ちとともに、出会いの季節に備えてみるのも良いかもしれませんね。
『月の満ち欠け』佐藤正午
第157回 直木賞受賞作品の『月の満ち欠け』は、ミステリーともホラーとも、恋愛とも言えない、愛の物語なんです。
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる
その言葉通り、何度生まれ変わっても恋人に会いに行く、一途さと執着心。今身近にいる人は誰かの生まれ変わりなのか?自分は誰の生まれ変わりなのか?「人」について考えたくなる作品です。
2022年冬には映画化も決まっているので、小説でも映画でも楽しみたいところですよね。
『真夜中の底で君を待つ』汐見夏衛
10代女子が選ぶ作家No.1に選ばれた汐見夏衛さんの『真夜中の底で君を待つ』は、真夜中が苦手な2人が出会い、心の底を解きほぐしながら、愛に飢えた彼女と愛を諦めた彼が織り成す成長の物語です。
“言葉”は生まれてからずっとそばにあるもので、当たり前の存在。大人になると忘れていってしまう言葉の大切さ、当たり前にあると思っているものの大切さを、改めて考えることができます。
『また次の春へ』重松清
3.11にまつわるエピソードを1冊にした『また次の春へ』は、東日本大震災後、大切な人を失った人達が、戸惑いながらも一歩を踏み出そうとするまでを描いた短編集です。
突然のことに整理できない心や、ぶつけるところのない想いが痛いくらい伝わります。大切な人を失うだけでなく、思い出の品や、思い出の場所が一気になくなる絶望…そこから未来に向けて前を向ける強さを見習いながらも、震災のことを忘れてはならない、思い出すきっかけになるような作品です。
『今夜、世界からこの恋が消えても』一条岬
ある日ちょっとした勢いで同級生の少女に告白し付き合うことになった少年。彼女は1日ごとに記憶を失っていく難病を抱えており、2人の過ごしていく日々を日記のように綴った小説です。
嘘から始まったはずの恋が本物になったのに、不幸に襲われてしまう…。今あるしあわせな瞬間は、2度と帰ってこないかもしれないという想いや、少年の深い思いやり、少女の不安などが交じり合い、1日1日を精一杯に過ごす大切さを考えさせてくれますよ。
この作品も、2022年7月29日(金)に映画が公開されるので、小説と合わせて観てみたいですね。
『タカラモノ』和田裕美
自由奔放な母に翻弄される娘が、反発しながらも人を愛し大人になっていく…そんな姿を娘の視点で綴る親子愛の物語です。
自由なことは悪いことではないかもしれないと思えるような、母の心の大きさや経験の大切さが描かれています。ありのままを受け入れてくれて、強くて優しく守ってくれる人がいる。身近な人のありがたみを再確認できる1冊です。
心を広げる有意義な時間を
1冊1冊に込められた、読者に「伝えたいメッセージ」。
そのメッセージを感じ取れた時に、自分の中に新しい感情が芽生えるはず。
今回ご紹介した小説はどれも、読み終わったあとに温かい気持ちになれるものばかりなので、興味のある方はぜひ手にとってみてください。