今までの詩、詩集は、紙のページという空間に配置された言葉の連なりでした。言葉そのものの力に加えて、その空間が私たちに与えてくれるリズムがとても重要でした。そういう意味で、魅力的な電子書籍がコレまで一体どの位あったでしょう。既にある本をPDFやWebサイトに毛の生えたような形で、そのままアプリに置き換えただけの単純なものが多かったと思います。それはただの文字の羅列で、本の持つ質感やリズムは無視されたものでした。「谷川俊太郎の「谷川」」は、本のページをめくるのと同じかそれ以上の楽しみで詩を読むことができる、今までに無い素晴らしい電子書籍アプリです。
「電子書籍アワード」とは、電子書籍の文化や市場を活性化することを目的として創設された賞で、メディアファクトリー主催、総合文芸誌「ダ・ヴィンチ」のWebサイト「ダ・ヴィンチ電子ナビ」では一般投票も行われました。結果は先月発表され、谷川俊太郎さんの詩33編を収めたこのアプリは、見事文芸賞を受賞しましました。 ただ詩を読むだけでなく、タッチパネルや傾きセンサーといったアプリの特性の利用が評価されたのはもちろん、川で釣りをするという世界観が詩集にマッチしていたセンスが良かったのだと思います。 川を次々と流れてくる言葉。
ピンチアウトでズームアップできます。言葉をタップすると流れが乱れます。iPhoneを傾けると流れる速さが変わるので、ゆっくりと言葉の一つ一つを眺めるも良し、次々と移ろいゆくのを楽しむのもまた良しですね☆右上の釣竿をドラッグしてきて、(言葉の頭についている)浮のところに針を持っていくと…詩を釣り上げることができます。釣り上げた言葉を含む詩はコレクションされ、「かんさつ」ボタンから、いつでも詩の全体を読むことができます。「紙の本や、電子の本という分け方ではない、もっと本質的なところで関われたらと思っています。」 という谷川俊太郎さんの受賞の声の通り、詩集としても電子書籍としても、既成の形とは違った新しい読み方で詩を楽しめる素晴らしいアプリになっています。 谷川俊太郎さんのファンだけでなく、老若男女ぜひ多くの方に触れて楽しんでいただきたいと思います♪