おとめ座
夢で逢えたら
遠きひと近き人
今週のおとめ座は、「遠きひと近き人など呼びてをりかぐはしきかなあちらの時間」(辺見じゅん)という句のごとし。あるいは、普段なかなか差し向けることなど考えもしないような相手に、自分のことを尋ねていくような星回り。
あなたが何者なのかということを少しでも知り、あなたにヒントを与えてくれるのは何も「近き人」(家族や友人)だけとは限りません。
「遠きひと」とは、この世では会いまみえることはなくても、縁のある人ということでしょうか。あるいは、かつては親交があったものの、相手が亡くなってしまってもはや直接接点を持てなくなった故人かも知れません。
いずれにせよ、何らかの縁ある死者たちもまた、あなたが何者であるかという問いへ大いに応えうる存在なのだと言えるでしょう。むしろ縁のある死者というのは、あなたが誰よりもおのれを剥きだしにして、向かいあえる対象でもあるのです。
今週は、あなたを草葉の陰から見守ってくれているであろう死者と、密やかなる対話を重ねていくには絶好の機会となっていくはずです。
エリアーデの夜目
例えば宗教学者エリアーデの遺した日記には「またもやあの奇妙な夢。」という一文から始まる、じつに美しい一節が出てきます。
「荒涼とした悲しみの感情しか想い出せない。悲しみは全面的で透明だったから、眠りの深みのうちにあって私の全存在が涙のうちに汲み尽くされるように思えた」
こうした夢に、昼間の現実と同等か、それ以上の価値を置き、自らの生の欠かせない一部として受け入れていったところに、エリアーデの宗教学者としての特異性と凄味が現われているのではないかと思うのです。
それがどんな些細な夢であったとしても、エリアーデであればそこに隠されたヒントを見逃さずに見つけていったでしょう。今週のあなたも、どうか死者や無意識からのメッセージを見逃さないよう、よく夜目をきかせていってください。
今週のおとめ座へのキーワード
「かぐはしきかなあちらの時間」