おとめ座
運命のひびき
既視感の光景
今週のおとめ座は、「稲びかり少女は胸を下に寝る」(加畑吉男)という句のごとし。あるいは、運命へ身を晒していくような星回り。
ここでは「少女」がこれから社会の中で生きていく上で避けられない「危険」や「闇」が暗示されており、胸を下にしている防御の姿勢の脆くあやうい様子が描写されています。
しかし、その一方で、そうして眠ってしまっている少女を見守る作者のまなざしには、どこか愛おしさや温もりが感じられます。
おそらく、作者は窓の外の稲びかりを見て、実在しない少女の姿をなんとなく思い浮かべたのだと思いますが、運命への予感とは本来そういうものでしょう。
今週はあっという間に表情を変える空のように、あなたの運勢に急激な変化がもたらされたり、無視しがたい相手によって大いに心が揺さぶられることが出てくるかもしれません。
けれどあなたの心の中では、そういう事態をどこかで知っていたという心境も同時に生まれてくるのではないでしょうか。
無防備であることへの覚悟
「ダ・ダ・ダ・ダーン。「このように運命は戸を叩く」とベートーベンはシントラーに語っている。だが、運命はノックしたりせずに入ってくるのではないか。と、私は思っているのだ。大仰な予告や前ぶれ、ダ・ダ・ダ・ダーンとやってくる運命のひびきは、運命そのものをつかまえた!と思いこむ傲岸さであって、ほんものの運命の方は正体をあらわすことなく、いつのまにか歴史を記述している。」(寺山修司、『さかさま世界史』)
だから私たちは「運命の予感」などと言いつつも、いつだってすでに運命が自分の元に来ていたことを、後になって思い知るのでしょう。
そうだとすれば、「清水の舞台から飛び降りる覚悟で〇〇をした」なんてことは幻想。「清水の舞台」から突き落とされた後になって、私たちは初めて自らの運命(=落下)に気が付いていく訳です。
無防備であることへの覚悟、それが今週のテーマです。
今週のキーワード
稲びかり