おとめ座
声なき声を大にして
素朴なる「うたがわず」
今週のおとめ座は、『バスを待ち大路の春をうたがわず』(石田波郷)という句のごとし。あるいは、自分自身にとってどうしたって疑いようのない真実を勇気をもって表明していこうとするような星回り。
作者が20歳前後で愛媛から上京してきた頃の句。戦前ですから愛媛にバスが走っていたかは分かりませんが、都会のあか抜けた光景のなかで、当時最新の乗り物であるバスを待っている。しかも季節は爛漫たる春。そんな高揚感のなかで、掲句はぽんと生まれてきたのでしょう。
しかし、最後の「うたがわず」というのは、一体どういうことなのか。疑おうが疑うまいが春は春でしょう。と、普通はそう考えるはずです。
都会の大通りにも春はきた。しかし、それ以上に自分自身に待ちに待った春がやってきたのだ。そのことを、他ならぬ作者自身が世界中の誰よりも実感していたのではないでしょうか。だからこそ、「うたがわず」とダメ押ししてみせたわけです。
そういう意味では、どこか若書き的な粗さも目立つ句ではありますが、そこがいい。同様に、3月25日におとめ座から数えて「実感の深まり」を意味する2番目のてんびん座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、下手に技巧に走ったり、無理して余裕ぶったりする代わりに、生きている今の実感をストレートに打ち出してみるといいでしょう。
『東京一年生』
ここで思い出されるのが、竹原ピストルさんの『東京一年生』という曲です。夢を追いかけ、東京に出てきた主人公の気持ちをストレートな歌詞とともに歌った曲ですが、おそらく実際に竹原さんが過去に感じていたことを歌っているのでしょう。
生きづらい、暮らしづらい、うまく呼吸ができない―。そういうことは誰しもが一度ならず感じているはず。歌詞に引き付けるなら、それは「夢があるから」であって、けっして「街のせいじゃない」んです。
例えば人ごみが息苦しかったなら、まずは自分が消えることだよ。さもなくば、窒息するまで歌いきるんだ
街に染まって誰かを汚い罠に陥れる側の人間になるのではなく、逆に堅苦しい価値観やガチガチに固められた奴隷根性に風穴をあけて緩めてあげられる側の人間になろうと。
そんな風に、今週のおとめ座もまた、できるだけ自分のなかの声なき声と向きあいつつ、それでいてどこかさっぱりと過ごしていきたいものです。
おとめ座の今週のキーワード
自分の実感をうたがわず