おとめ座
ととのう
原野の農夫
今週のおとめ座は、『をちかたのみどりさだまる冬日かな』(長谷川双魚)という句のごとし、あるいは、大いなる循環や呼応へと自身の意識を溶け込ませていこうとするような星回り。
「をちかた」は遠くの所やずっと向こうの方を表す古語。おそらくは日差しのあたたかな冬の日の午後に作者が実際に目にした光景なのでしょう。
落ちるべき葉はことごとく落ちていく冬の眠りのなかで、「みどりさだまる」そのかすかな茂みは、シイかクスノキか。いずれにせよ同じ常緑樹でも、この作品には山奥に寒々としげる針葉樹林というよりは、陽だまりが似合う広葉樹林がよく似合います。
中天にあってもいたってしずかな冬日と、それを受け止める緑のおだやかな円みと。その両者の呼応にこころゆだねた人の清冽な観照だけがここにあり、そこに垣間見える詩心の澄みにはのどかながらも非常に強い印象をうけるはず。
ここには自意識に閉じ込められて、世界をますます狭小なものへと縮めていく現代社会におけるごくありふれた人間の在り様とは、じつに対照的な存在の流儀が書き記されているのではないでしょうか。
11月24日におとめ座から数えて「場づくり」を意味する4番目のいて座へと「開拓」を司る火星が移動していく今週のあなたもまた、意識の原野をもくもくと耕していく農夫にでもなったつもりで過ごしてみるべし。
ケボカイの儀式
場づくりと宗教的儀礼には深い関わりがありますが、例えば、古来より仕方での狩猟を行う「マタギ」もまた、独特の儀礼文化を代々伝えてきました。
彼らは基本的に「山は山神様が支配するところであり、クマは山神様からの授かり物」であると信じており、獲物を授かるための儀式を大切にします。中でも、特に大切にされているのは「ケボカイの儀式」というもので、これは射ち獲ったクマの頭を北に向け、左の足を下にして仰向けにし、次に塩をふって唱え言葉を3度繰り返すという神事。
ひるがえって、普段私たちは既に殺された牛や豚、鶏、魚たちをスーパーで買って食べていのちを繋いでいる訳ですが、それは「日々殺しを買っている」のと同じこと。しかし、それを意識して過ごしている人はほとんどいないでしょう。
ここでなにもマタギを賞賛して、かつての習慣に帰ろうと言っている訳ではありません。ただ、普段忘れてしまっていますが、すべての人には自然やこの世界に育ててもらった「借り」があり、「義務」という概念の根本にはそうした事実があるのだということを思い出してほしいのです。
今週のおとめ座もまた、いま自分が抱えている欲望が自然なギブ&テイクのサイクルにおいてどれくらい適切なものなのか、いったん考え直してみるといいかも知れません。
おとめ座の今週のキーワード
欲望を調える