おとめ座
低め視点から流れるように
普通言わないことをあえて言う
今週のおとめ座は、『去年より又さびしひぞ秋の暮』(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、以前とはどこかで違ってきている自分自身を再発見していくような星回り。
前書きに「老懐」とあります。秋の暮れがさびしく感じられるということは、これまでたくさんの人が、それこそ耳にタコができるほどに詠んできた訳ですが、ここで作者は人と違った振る舞いをしてやろうといった気取った構えをといて、老心そのままの作を試みているのでしょう。
それはいわば、ことさらに言わないようにしてきた本音をストレートに突き出してみせる危険をあえて犯した、怖いもの知らずの句づくりであり、掲句は大胆不敵な妙手とも、作者がかました渾身のボケとも取れる一句です。
しかし、同じ季節になると毎年感じているはずのさびしさであっても、それがふと去年にも増してグッと深くなっていることに気付いたのは、やはり相応の年齢を重ねたためでしょう。
そういう「発見」があればこそ、何のひねりもないような一言や振る舞いにもかえって味が出てくる。そして、それも実際に声をあげたり、行動を起こしてみなければ確かめようがありませんし、実感も湧かないものです。
12日におとめ座から数えて「受発信」を意味する3番目のさそり座に火星が入っていく今週のあなたもまた、自然と言葉数が増えたり、自分を確かめるような言動を取っていきやすいでしょう。
つかえが取れる
江戸時代の三大俳人の一人である小林一茶は、庶民的な句を大量につくりだしたことで知られていますが、40を少し過ぎたあたりから句が明らかに変わっていきました。
かなり露骨な貧乏句を作るようになったり、他にも奇妙な変わり様を見せるようになって、これが長年の庇護者たちの首を大いにかしげさせました。いい変化なのか、わるい変化なのか判別がつかなかったのです。
この点について例えば作家の藤沢周平は評伝小説『一茶』の中で、自身も高名な俳人で一茶の生活の世話などもしていた夏目成美(なつめせいび)に次のように語らせています。
これを要するに、あなたはご自分の肉声を出してきたということでしょうな。中にかすかに信濃の百姓の地声がまじっている。そこのところが、じつに面白い
今週のおとめ座もまた、一茶ほどではないにせよ、どこかで自分が変わりつつあることの予感や実感を、誰かとの会話や対話の中でつかんでいくことができるかも知れません。
おとめ座の今週のキーワード
地声がまじる