おとめ座
人間なんてナンボのもんじゃい
みな等しく孤独に
今週のおとめ座は、『夏蝶もみんな孤独死ではないか』(仙田洋子)という句のごとし。あるいは、世の移り変わりを自身の実感に落とし込んでいこうとするような星回り。
「孤独死」という言葉は日本で高齢化が問題化した1970年代にマスコミによって作られた造語だそうで、1995年の阪神・淡路大震災後から特に使用されるようになったのだとか。
記憶に新しいところでは、2010年代はじめ頃にNHKの特集番組発で「無縁社会」という言葉が大きな反響を得ていましたが、そうした社会の変化はおのずと自然を見るまなざしまで変容させていくのでしょう。
どんな人間であれ孤独死する可能性があるのだ。いわんや夏蝶をや、と。大ぶりで華やかな美しさをもつ揚羽蝶も、若さを持て余した20代の若者も、同じようにひとり切りで死んでいくのだ。
こう言い切ってみると、意外と掲句の後味は暗くも重たくもないことに気が付く。むしろ、魂をもった存在というのは、ほんらいみな等しく孤独に死んでいくものだったのかも知れないという不思議さへの開かれや、狭隘(きょうあい)な人間的枠組みからのささやかな解放感さえ感じられてくる。
その意味で、現代において私たちは、人間同士のつながりが限りなく薄くなった一方で、自分たちが人間であるということをあまり特別視しなくなりつつあるのだとも言えます。
7月18日におとめ座から数えて「視野の拡がり」を意味する11番目のかに座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そうしたささやかな解放感を噛みしめていくべし。
砂漠で浮き彫りになるもの
例えば、『少年と犬』(1975、アメリカ)という映画は、開始冒頭の「第四次世界大戦は5日間で終わった」というショッキングな宣言から始まるのですが、すべてが灰燼(かいじん)に帰した何もない砂漠世界という極端な設定によって、「みな等しく孤独に」ということがまさに浮き彫りにされていく映画なのだと言えるかも知れません。
砂漠のあちこちに埋まっている缶詰を求めつつ、主人公の少年ヴィックと犬のブラッドは放浪生活しているのですが、彼らの関係はペットと飼い主ではありません。放射能の影響か、ブラッドは高い知性や戦争前の世界についての多くの知識を有しており、完全にブラッドの方が「先輩」なのです。
彼はヴィック少年が「食うこと」となどしか考えていないことに半ばうんざりしつつも面倒を見ており、かわいい女の子の尻を追いかけて突撃した豊かな地下世界が実は歪んだ奴隷社会のディストピア(そしてこれは現代社会への皮肉でもある)だと分かった末に、少年がようやく「自分の最良の友は犬だ!」となったところでこの映画は終わるのです。
今週のおとめ座もまた、願わくばそんなヴィック少年のように、自分にとって大切なものが何であるかということに改めて気付いていくことでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
「自分の最良の友は〇〇だ!」