おとめ座
生活とストーリーと
これは仕事じゃない
今週のおとめ座は、「単に日々、やっていること」という呪文のごとし。あるいは、「仕事」という言葉への憎しみから少しだけ解き放たれていこうとするような星回り。
進化生物学者のスティーブン・J・グールドがインタビューに答えた次のような一節を聞いていると、私たちは決して「仕事をしすぎている」のではなく、むしろ「仕事」という固定観念に囚われ過ぎているのかも知れないという疑念が湧いてきます。
私は毎日仕事をする。週末も、夜も……それをはたから見ると、“仕事中毒”という現代的な言葉で表現できるかもしれないし、“強迫観念にとりつかれている”とか、“破滅的”といえるかもしれない。だが、私にとって、仕事は仕事じゃない。単に日々やっていることで、それが私の生活なんだ。家族ともじゅうぶんな時間をいっしょに過ごし、歌もうたうし、野球の試合もみにいく。フェンウェイパーク球場には年間予約席ももってるから、しょっちゅう行ってる。つまり、単調な生活を送っているわけじゃない。だが、基本的には、終始仕事をしている。テレビはみない。だが、これは仕事じゃない。仕事じゃなくて、生活だ。毎日やっていることで、やりたいことなんだ。(『天才たちの日課』)
私たちが、何もかも「仕事」と呼んでそこにはまりこむことを「中毒(ホリック)」すなわち異常状態と呼ぶのは、それらがどこまでも“押しつけられたもの”でしかなく、みずから選び取り、親しんでいる「生活」にまで至っていないからなのではないでしょうか。
その意味で、29日におとめ座から数えて「風通し」を意味する11番目のかに座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、どんな仕事をしたいかではなく、どんな生活をしたいか、そしてそこにどれだけ、またはどんな類の「仕事」が含まれているか、という仕方で、自身のQOLの向上をはかっていくことがテーマとなっていきそうです。
ポスト雇用時代の「働く」
仕事や「働くこと」をめぐる環境が劇的に変化しつつある今、私たちは企業も働き手もともに選択のオプションが急速に広がっていく過渡期に立っているのだと言えます。
そこでは新たな働き方への適応だけでなく、新たなストーリーもまた求められており、それは「成功」の基準はなにも売上や成長率に限らないこと、会社もまた経済的利益の追求や成長だけを目的とするものではないこと、などの再定義の問題と表裏の関係にあります。
端的に言えば、従来までのような「お務め」的な労働感覚をベースにした雇用=安定の時代はいま急速に終わりつつあり、フリーランス的な立ち位置や事業主的意識を今後は大多数の人が持たざるを得なくなっていくでしょう。その中で、「好き」だけで自分のキャリアやモチベーションをデザインしようとするのではなく、働くことを続けていくための栄養となる自分なりの「ミッション」を抱いていくことができるかどうかが、優れた働き手(「エリート」という意味ではなく)の指標となっていくのではないかと思います。
今週のおとめ座もまた、目の前のタスクやルーティンを追うのではなく、できるだけ俯瞰的な視点から自分の立ち位置やストーリーを見据えていきたいところです。
おとめ座の今週のキーワード
仕事じゃなくて、生活だ。