おとめ座
気韻生動
乱れた呼吸を整える
今週のおとめ座は、心身一如への一歩のごとし。あるいは、心身が静かに充溢していく「空」へと傾斜していくような星回り。
資本主義社会を牽引する企業たちは目下のところ人間にとって著しく心身のバランスを崩し、メンタルを不安定にさせる環境を今もなおもりもりと形成し続けていますが、彼らの戦略の根本は「人びとを“息つく間もない”ような絶え間ない消費に巻き込む」ことであり、そこに乗った人たちは当然の結果として、心身を逃げ場なく固定化された「自然な呼吸の抑圧ないし圧迫」という事態を招いているのではないでしょうか。
対して、例えばブッダが実践したヴィパッサナー瞑想やヨーガなど、呼吸の鍛練に基づいて「心身一如」の境地を探究してきた東洋の伝統においては、心の静まり、呼吸の静まり、体の静まりが、三つ巴となって深まりあいながら、いわば螺旋的に心身が脱構築化されていくような生活デザインが大切にされてきましたし、その極致として完璧な静まり=「止」としての解脱ないし生命エネルギーの全焼ということが求められたのです。
これは例えば、自己をありのままに見ることを徹底するヴィパッサナー瞑想において、最終的に「見る」自己さえ失われ、<空>が開かれる過程を思い浮かべてみるといくらか腑に落ちるのではないでしょうか。そして<空>とは単に「からっぽ」なのではなく、逆に宇宙を循環するエネルギーが静かに満ちる「充溢」であり、それは「エロスの浄楽」であり、「太陽からの純粋贈与」に近いものという風にも考えられます。
29日におとめ座から数えて「身体のリズム」を意味する6番目のみずがめ座の半ばに太陽が達して立春を迎えていく今週のあなたもまた、自分なりの「心身一如」すなわち精神と肉体を同時に生かしていく道を見出していきたいところです。
座禅姿の自画像としての山水画
五代(10世紀)や北宋(10~12世紀)の時代の最も古い段階の山水画には、いずれも大地からにょっきりと突き出た山や岩の塊が描かれていますが、山頂が妙に丸みを帯びていたり、遠くの山々が霞の中に消えていたり、そもそも飛行機ほどの高さから見下ろした構図であったりと、実際の光景というより観念で描かれたもの特有の特徴が見られます。
例えば、11世紀の郭煕(かくき)の描いた「早春図」もまた、山そのものを眠りから覚めてむっくりと起きあがろうとしている巨人として描いており、冬から春に向かう自然界の「気」が山を生みだしたイリュージョンとして解釈することができます。
山水画の鑑賞では、絵がいきいきとして感じられるとき「気韻(きいん)生動(せいどう)がある」などとも言いますが、そこには描いた画家が思い描いた理想の神霊や気の流れが、ひとつのレイアウトやデザインとして刻み付けられていた訳です。
彼らはそれをただ描いただけでなく、きっとそうした気の流れの中に何度となく身を置き、遊んでいくことで、自身の英気を養っていったのでしょう。今週のおとめ座もまた、そうしたよい気を養うための時間や空間を大切にしていきたいところです。
おとめ座の今週のキーワード
自分をラクにしてくれるものに大いに頼っていくこと