おとめ座
子どもの目と大人の口を
冷たい恩寵
今週のおとめ座は、『冬の馬美貌くまなく睡りをり』(石川雷児)という句のごとし。あるいは、丁寧に言葉を紡いで自身の運命を象っていこうとするような星回り。
「美貌」という意表をついた言葉遣いに思わずドキリとさせられる一句。確かに馬は家畜の中でも最も美しい獣であり、それは若いサラブレッドであっても、荷を運ぶ老いた馬であってもそう変わらず、どこか人に言葉を選ばせるような美しさを秘めている。
「くまなく」とすみずみまで光を当てて浮かび上がるその姿には、もはや家畜としてのドメスティックな臭気の一切は払拭されており、作者の「睡りをり」という言葉にはどこか心の肌をもって真心から接するような情が込められています。
さらに、「冬の」という限定がつくことによって、それがどこか聖書の一幕のような温かい光に包まれ、そこにどうにもやりどころのないかなしさのようなものが表現されているようにさえ感じます。
この透き通ったかなしみはどこから来るのかとちょっと戸惑いますが、これは作者が鉱山勤めが原因で36歳の若さで夭逝していることも関係しているのかも知れません。つまり、この睡る馬とはどこかで作者自身なのであり、その上で雷を轟かす天のなかに作者は自身の運命を感じ取ったのでしょう。
同様に、16日に自分自身の星座であるおとめ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな冷たい恩寵に駆られていきやすいタイミングなのだと言えます。
モモへの忠告
真実を垣間見たものが一時的に不幸に陥るのは古今東西を通して変わらぬ普遍的展開であり、その意味で例えば『ヘンゼルとグレーテル』に登場する幼い兄妹と「目の悪い魔女」などは、分かりやすいほど対照的な設定と言えるでしょう。
ただし、子どもというのは内的真実と外的事実が容易に混ざり合い、真実に触れた心の動きの激しさの前で、しばしば発する言葉を失ってしまうため、それを直接的に行動で現わす他なくなった結果、残念ながら「非行」や「子どもの気まぐれ」の名のもとに現実社会からは排斥されてしまうのです。
結果的に、ミヒャエル・エンデの『モモ』よろしく、現実社会では「近代的で、進歩的」な人ほど、功利主義や既成の枠組みにとわれ、「灰色」に染まっていく訳ですが、一方で内界の素晴らしい秘密を垣間見つつも人びとの話を聞くことしかできない少女モモに対しては、それを自分の口で伝えていけるようになるために「お前のなかで言葉が熟さないといけない」という忠告が与えられたのでした。
その意味で、今週のおとめ座もまた、改めて心動かされる真実を前に、それに相応しい言葉が出てくるまできちんと熟成させていくことを大切にしていきたいところです。
おとめ座の今週のキーワード
内的真実と外的事実を時間をかけて結びつけていくこと