おとめ座
“外部”との交錯
岬・崎・鼻
今週のおとめ座は、『数多なる岬・崎・鼻けぶる夏』(澤好摩)という句のごとし。あるいは、日常世界の枠を超えた、遠くとのつながりを思い出していくような星回り。
「岬・崎・鼻」はいずれも海の方まで突き出ている陸地の名称であり、薩摩半島の最南端には長崎鼻と呼ばれる岬があり、これは浦島太郎が竜宮へ旅立ったと言い伝えられている岬とされています。
ただし、それらが「数多ある」という感覚は、都会に暮らしているとほとんど実感がなく、日常的にそれを感じながら生きている人もほぼいないように思います。
言われてみればその通りなのですが、日本は海に囲まれた島国であり、夏には各地の「岬・崎・鼻」に怒濤がうち寄せては、しぶきでけぶっていることでしょう。そうした地形の多くには、近くに神社があって、これらは神が彼方から漂着してきたという信仰の痕跡であり、日常的な文脈の外から想定していなかったイメージやことばの到来を受けとる詩人の姿や、掲句を読む自分のような読者を象徴的に表現しているのだとも言えます。
その意味で、6月29日におとめ座から数えて「ネットワーク」を意味する11番目のかに座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、遥か彼方から訪れるものを思い、その到来を待ち受けてみるといいでしょう。
縦軸と横軸の交わり
鶴崎燃の『海を渡って』という写真集があります。この写真集のテーマは「移民に世界はどう見えているのか」。
日本と満州、ミャンマーと日本など、故郷から異郷へと渡ってきた人々の「かつていた場所」と「今いる場所」を対置させていくことで、隔てられた2つの場所、2つの時間を結びつける目に見えない‟糸”の存在を読者にまざまざと感じさせていくのです。
人は皆、縦軸=歴史と未来をつないでいく時間の流れと、横軸=同じ時代を生きる人々によって共有されている空間の広がりが交差する地点に生きていますが、こうした作品を見ていると、地球上でほんの少し座標のずれた地点に生を受けただけで、「これは自分の人生だったかも知れない」という不思議な感慨を少なからず覚えていくはず。
中国からの引き揚げ者やミャンマー移民の背後には、大きな時代のうねりが働いていましたが、それは現代日本を生きる私たちにおいてもまったく同じであり、生ある限り彼らと同じように同じ時間の流れの中で自分固有の物語を紡ぎ続けていくのです。
その意味で、今週のおとめ座は、まだ自分が知らない未知の地点へと‟糸=意図”を通し、結び付けることで、新たな人生物語の展開をもたらしていくことがテーマとなっていくのだとも言えるかも知れません。
おとめ座の今週のキーワード
イッツ・ア・スモールワールド