おとめ座
魅惑と没頭
※1月10日〜16日の占いは、諸事情により休載いたします。誠に申し訳ございません。次回は1月16日(日)午後10時に配信いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
探求の原動力
今週のおとめ座は、「猫のしっぽ論」について研究する研究者のごとし。あるいは、よくわからないものをどうにかわかりたいという気持ちが再燃していくような星回り。
猫のしっぽは猫の感情の動きに応じて、さまざまな位置形状や動きを示しますが、しっぽのない人間には猫のしっぽの気持ちを即座に察知することはなかなか難しいことです。舌でなめたり、後ろ足で体を掻いたりする気持ちはなんとなく想像することはできても、しっぽの振り心地や曲げ心地について、共感することさえできないようにできている。
したがって、われわれ人間にできることは、せいぜい猫のしっぽの動きと気持ちの相関関係について観察し、仮説を立て、推測し、検証するか、誰かの書いたものを参照することだけな訳ですが、これは自分の体験を超えた死や死後のことや人間の運命についてとり扱う宗教や占いに関しても同じことが言えるでしょう。
ただ、宗教の研究をしていますと言えばそれらしく聞こえる一方で、「猫のしっぽについて研究しています」などと言っても奇妙がられるのが関の山であるのが大きな違いですが、逆にどちらも共通しているのは、猫も死も運命学も、いったん魅入られると時間を忘れてその研究に没頭してしまい、そこに利益などは求めないところです。
2022年1月3日におとめ座から数えて「息抜き」を意味する5番目の星座であるやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、ひとつそうした研究をしている身になったつもりで、何かにやむにやまれず没頭していく時間を確保してみるといいでしょう。
「深い闇の底のあやしい明り」に誘われて
川端康成の小説『眠れる美女』には、薬で眠らされている若い女に添い寝し、体に触れもせずに一夜を過ごす、そんな老人専用の高級娼館を訪れるひとりの老人が出てきます。
初めて訪れた頃は、「なに、自分はまだ本番まで致せるぞ」と、内心ムッとしていた主人公の江口老人も、次第にその悦楽にはまり込んでいくのです。
なにもわからなく眠らせられた娘はいのちの時間を停止してはいないまでも喪失して、底のない底に沈められているのではないか。(中略)もう男でなくなった老人に恥ずかしい思いをさせないための、生きたおもちゃにつくられている。いや、おもちゃではなく、そういう老人たちにとっては、いのちそのものなのかも知れない。こんなのが安心して触れられるいのちなのかもしれない。
そう、眠る美少女は老人にとって「性」へと誘うフェティシズムからいつの間にか「死」へと誘うフェティシズムへ変わっていく。それは自分が死にたいとか、そういうことではなく、もっと倒錯したところで「死」そのものが魅力的であることを知ってしまうのです。
同様に、今週のおとめ座もまた、普通に日常生活を送っているだけでは決して気付かなかったであろう欲望を静かに燃やしていくことになるかも知れません。
おとめ座の今週のキーワード
フェティシズムの深まり