おとめ座
ウッホ、ウッホッホ
新しくも奇妙な生活
今週のおとめ座は、安部公房の『砂の女』の主人公のごとし。あるいは、予期せぬ出来事を受け入れていこうとするような星回り。
アマチュア昆虫採集家の仁木順平は、新種の昆虫を探しに、鉄道の終着駅から海岸沿いの砂地へ出かけ、そこで虫を追ううちに、たえず形を変える砂丘によって外界から隔離された村に行き着く。そこには地表から15メートル掘り下げた穴の底の住居に住む人々がおり、彼らは家が埋もれてしまわないよう、毎日夜になるとバケツ何杯分もの砂を掻き出し、地上にいる村人にロープで引き上げてもらっていたのでした。
順平はそんな穴のひとつに誘いこまれ、その底にあった若い未亡人の家で、砂を掻き出す作業を手伝うことになる。しかし、思いがけないことに、翌朝目を覚ますと、穴の外へ出るためのはしごが外されてしまっていたのです。
それ以来、順平はなんとか外へ逃げ出そうと試みるものの、砂を運搬道具に入れ、地上の村人に引き上げてもらう作業を続け、合間に食事をしたり、眠ったり、情事を重ねていくうちに、次第に新しい奇妙な生活を受け入れ始めている自分に気付きます。
12月4日におとめ座から数えて「冬ごもり」を意味する4番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、砂の壁に包囲されてしまった主人公のように、急な人生の変転があったとしても、そう悪くないものだと思い直してみるといいでしょう。
新素材を前にして
たとえば銅の使用の始まりは石器時代末期のことでしたが、当時の人たちはこの新たな金属材料でまず既存にあった石器の形を、そっくりそのまま模造していたそうです。
新しい人生の素材や体験に直面したとき、その素材や体験に見合った適切な形式やデザインを発見し、適用させていくということは案外とても難しいことなのだということは、現在の社会状況を持ち出すまでもなく、ここからも伺われるのではないでしょうか。
古い形式は古い素材だからこそ適切だったのだということは、やはり実際に新素材の不得手を痛感する機会がなければ分からないのだということ。逆に、古い形式に新しい素材を取り入れてみて、古い形式のこれまで気付かなかった長所を再発見していくということも、言うは易し。なかなかに難しいことだとも言えます。
今週のおとめ座もまた、自身の生き残りを賭けた取り組みにおいてどれだけ価値のある失敗を積み重ねられるかが問われていくことでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
縄文人に相談だ