おとめ座
無為/無意味からの離脱
慣性の利用
今週のおとめ座は、「中絶読書」のごとし。あるいは、あえて別れるという選択をすることで自然に新しい考えをもっていこうとするような星回り。
外山滋比古は『知的創造のヒント』の中で、出だしから知的刺激を感じた本に関しては、ぜんぶを読み切らないで、おもしろくなりそうなところで、つまり、スピードが出てきたところで本から離れるという付き合い方もあるとも述べていました。
確かに、本を読むにせよ、投票をするにせよ、私たちが何か活動をする際には必ず慣性がはたらいて、一度なにかを始めると途中でやめるのが面倒になったり惜しくなったりして、結果的にあまりに多くの影響を受けすぎることになってしまうことが多々あるように思います。
外山は「本はきっかけになればよいし、走り出させてくれればそれでりっぱな働きをしたことになる」とも書いていますが、ときどき先を読むのがなんだかこわく感じるような本があるというのも、途中できってそこから慣性を利用して自分の考えを浮かび上がらせることを、私たちが心のどこかで自分に期待し始めたからなのかも知れません。
さて、今あなたの目の前には、そう感じられるような本であったり、取り組みであったり、関係性であったりはあるでしょうか。
11月5日におとめ座から数えて「学習と発見」を意味する3番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そっと離れるからこそ感じられる余韻に思いを馳せてみるべし。
無意味を超えて
自分がもっとも自分となるような、つまり最大限に自己を表現できるような行動方式を見いだすのが「アウトサイダー」の仕事である。(中略)「アウトサイダー」は、たまたま自分が幸運に恵まれているから世界を肯定するのではなく、あくまでも自分の「意思」による肯定をしたいと願う。
様々な人物や作品を例にとりながら創造的個人としてのアウトサイダーを描いていったコリン・ウィルソンの『アウトサイダー』の主題は、「私たちはなぜ日常に倦怠してしまうのか?」という一点の疑問に集約することができますが、これは現代人はなぜ飲酒やドラッグ、いじめや不倫をやめられないのかといった問いと置き換えることもできるはず。
日常が退屈だから。そう答える他ないところを、著者は例えば「(自分には)才能もなく、達成すべき使命もなく、これと言って伝えるべき感情もない。わたしは何も所有せず、何者にも値しない。が、それでもなお、なんらかの償いをわたしは欲する」のだと述べていたりします。
これは本当にその通りで、みんな人生という不可解なものの内では結局何も所有することができないからこそ、何か可能なものを成就せんとして、醒めながら手を動かすのかも知れません。その意味で、今週のおとめ座もまた、怠惰に陥るのでもなく、機械にお任せするのでもなく、自分の眼と手足でもって、より困難な試みに挑んでいくことをみずからに課していくことになるでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
創造的であるとはアウトサイダーになることである