おとめ座
サーファーから葦笛へ
はぐれサーファー純情派
今週のおとめ座は、「晩秋のサーファーひとり火を作る」(堀本裕樹)という句のごとし。あるいは、生産性や効率の追求といった文脈から外れてボーっとしていくような星回り。
浅黒く日に焼けて永遠の青春を享受しているかのように見えたサーファーたちも、秋も深まり冬が近づいてくれば、自然と海からあがって帰るべき居場所を探し始める。
渡り鳥のように南国へと群れをなして長距離移動していくサーファーも少なくないのかも知れないが、ここでは群れから外れたように「ひとり火を作る」姿が詠まれている。はぐれ鳥ならぬ、はぐれサーファーだ。
浜辺で流木や枯れ木を集め、焚き火をしている。はぐれサーファーは、器用に環境を変え、永遠の青春を続行しようとする代わりに、失われた青春に思いを馳せつつ、その事実を受け入れることで、自分のなかで何かが変わっていこうとしているのをただ感じようとしたのだとも言える。
たとえ今いる環境が厳しくとも、熱源さえ確保できれば、多少時間はかかってもそうした変化に対応していくことはできる。それは新たな事物に興味を持つことだったり、ちょっとしたことに感動すること。火を作らなければ、そんなことさえも難しくなるのだ。
29日におとめ座から数えて「意識の余白」を意味する12番目のしし座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、心の奥底のほうでくすぶっている火の種にそっと息を吹き入れていくことがテーマとなっていくように思う。
小さな葦笛
では、どうすればそうした心の奥底にインスピレーションを吹き入れていくことができるのか。例えば、ベンガル出身の大詩人タゴールは、詩集『ギーターンジャリ』の中で次のように書いていました。
あなたは私を限りないものにした。それがあなたの楽しみなのだ。この脆い器を、あなたは何度もからにして、またたえず新鮮な生命を注ぎ込んだ。この小さな葦笛を、あなたは山や谷に持ち回り、永遠に新しいメロディーを吹いた。あなたの手の不死の感触に、私の小さな心臓は喜びのあまりに限度を失い、言いようのない言葉を叫ぶ
自分というものを、特定の感情や記憶を‟持っている”存在としてではなく、何者かから、それらを‟あずけられている”存在として見なすことができた時、もしかしたらサーファーは冬の海に代わる、自身の居場所や遊び場を見つけていくことができるのかも知れません。
自分を「からっぽの器」だと観じて、そこに充ちているものの来し方行く末を想うこと。今週はそういう仕方で、自身の今後の身の処し方ということも考えてみるといいでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
私有と共有