おとめ座
自分で自分を肯定する
紙芝居を後ろからめくっていくように
今週のおとめ座は、岸田少年の「架空の借金」のごとし。あるいは、自分の存在を肯定するための合理化をこそ図っていこうとするような星回り。
心理学者の岸田秀は、自身が少年期に苦しんだ「実際には借りてない借金を友人から借りてしまっている」という強迫観念の原因が自分と母親との関係にあるということに、たまたま読んだフロイトの著作を通じて気が付きました。
『フロイドを読む』によれば、それでも岸田少年ははじめ「悪いのは母ではなく、家業を継ぎたくないと思ってしまっている自分のほうだ」と思い込むようにしていて、さらには当時の女性が置かれていた社会的立場なども勘案して、母は「かわいそうな人なのだ」という仮説も付け加えることで、「だから母は無理解なだけで、自分を愛していないわけではない」という結論へと合理化しようとしていた。
けれど、やがて母親の無理解が選択的なもので、自分にとって不都合な事実だけに無理解であることに気付くと、自分の仮説が成立してないことを受け入れ、フロイトに基づいて「強迫観念は正しい」と考えてみました。
つまり、「返さなければならない母への恩」が「返さなければならない友人への借金」へとスライドしていただけで、「場面を間違えていただけの「正常な」反応」だったのだという結論にいたったことで、不合理に思われた「架空の借金」がついに合理化され、ずっとくすぶっていた罪悪感と抑うつ感情も解消されたのだそうです。
17日におとめ座から数えて「自己肯定感」を意味する2番目のてんびん座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、たとえ不可解な症状や状況に陥っていたとしても自分のことを信じて考え、行動していきたいところです。
無力でポンコツな私から始める
私たちは無意識のうちに「本能だけで生きている他の生物たちよりも、文明を持つ人間は優れている」とどこかで考えていますが、岸田秀は逆なのだと言っています。人間は決して動物より高等な生物ではないし、むしろ「人間は本能の壊れた動物」であり、動物と比べて感覚もずっと鈍く、特質すべき武器や防具も持っていないポンコツであるがゆえに、文明を作らざるを得なかったのだと。
人間は日常生活をひっくりかえすために戦争をする。そのことによってわれわれがいかに日常生活を憎んでいるかがわかる。(『ものぐさ精神分析』)
人間が本当の意味で憎んでいるのは、きっとおのれの無力さでしょう。けれど、今週のおとめ座であれば、原因と結果を逆にひっくり返していく残酷な試みを通して、自己をめぐる真実を少なからず垣間見ていくことができるはず。
おとめ座の今週のキーワード
もし人生が紙芝居だったなら