おとめ座
歌に託して
鋭く迫る
今週のおとめ座は、「月やあらぬ我身ひとつの影法師」(松永貞徳)という句のごとし。あるいは、自分を傍に置いておきたいと思える相手の姿がスッと浮き彫りになってくるような星回り。
作者は江戸時代前期の歌学者でもあった俳人で、平安時代初期の在原業平の「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」をもとにした一句。
去年の春の夜に逢った恋人を思う歌ですが、作者はその歌の言葉をそっくりそのまま拝借して、秋の句へと転じています。
「月やあらぬ」とは、月はもう過去のそれとはちがう月なのか、の意。時は流れ去って、自分の影法師があるだけ。そうとると、とても切なく、寂しい俳句のように感じられるかも知れません。
しかし、移ろう時は止めることはできてなくても、自分の思い一つであればいつまでも誰かの傍にとどめておくことができるのだ、という意図が暗に示されている一句とも解釈できるのではないでしょうか。
9月2日におとめ座から数えて「向き合うべき対象」を意味する7番目のうお座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、思いの丈を鋭く研ぎ澄ませた上で特定の「誰か」に向かってそれを解き放っていくことがテーマとなっていきそうです。
封じ込めず、軽くもせず
誰もが臆病な自尊心が傷つくの怖れて、直接間接いずれのコミュニケーションにおいても何重もの自己防衛のクッションを挟み込んでいくことに余念がない現代のような時代において、王朝時代のような歌による「恋の告白」というのはもはやファンタジーの世界でしか起こりえない非現実的な行為のように思えます。
フラれるかもしれないし、バカにされることだってありえる。既読スルーどころか、魚拓をとられて情報を回される可能性だってある。そんなコミュニケーション環境にあって、恋の告白は極度に軽くなるか、ついに言いだせず胸の中に封じ込められるかのいずれかに二極化していくのは必然でしょう。
けれど、そんな時代だからこそ掲句のような告白技術の洗練ということも追求できるはずですし、それこそが今週のおとめ座の人たちの精の出しどころと言えます。
ギリギリのラインを一歩踏み越え、勝負に出ること。舞台の上にあがること。そんなことを頭の隅に置いておくといいでしょう。
今週のキーワード
切実であることはそれ自体に価値がある