おとめ座
GOTO真っ白な空(うつ)ろ
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今週のおとめ座は、「頭の中で白い夏野となつてゐる」(高屋窓秋)という句のごとし。あるいは、自分の中で習慣化していた考えやイメージをかき消していくような星回り。
頭の中で、何かが白い夏野になっている。しかし「何か」が何なのかは示されていません。それどころか、文語も、俳句の約束事である切れ字(「や、かな、けり」などの文を途中で区切る表現)も使われず、すべて話し言葉である口語になっています。
この句は、実際に夏の野原に向き合って作られたものではありません。作者による自注によれば、白い原稿用紙の真ん中に「白い夏野」とだけ書いて、1週間見続けたのだといいます。本当かどうかは分からないですが、そうしたエピソードも込みで、「頭が真っ白になる」という追体験を読者に及ぼす強い観念的影響力を持つ句であることは間違いありません。
近代の俳句は、実際に外に広がる風景を客観的に描写する写生主義から始まったとされますが、作者はそうした従来の慣習や姿勢そのものを真っ白に塗りつぶしたかったのかも知れません。
その意味で、8月4日におとめ座から数えて「個人的危機」を意味する6番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、これまで無意識に従ってきた習慣や考え方をいかにただし、どこまで自分なりのスタイルへと整えていけるかが問われていくでしょう。
「うつろい」の感覚
おとめ座の人たちがこのタイミングで注目しておきたいものは、「うつろい」の感覚と言ってもいいかも知れません。
これは「ウツ(空)」という言葉を語幹として生まれた言葉で、空疎な状態になにかがやってきて移っていくことを言います。ついでに言えば、そこでは「移る」だけでなく「写り」や「映り」も起こっており、それら複数のイメージの重層的な相入相関のなかで、「うつつ(現)」が微妙に移り変わっていく。
それは、生命というものの完璧なオリジナルがどこかにあって、定期的に元通りに復元していこうとするのでは決してありません(それは厳しい自然のもとではどうしても無理が生じ、失敗に終わってしまいます)。
そうではなくて、時のうつろいとともに自分もうつろい、そこで必然的に生じるゆがみやほころびも遮断しないでいるということを感覚的によく表しているし、そこでは生きることは絶えず生まれ変わっていくことに他ならないのです。
そうした生まれ変わりのコツやきっかけを、今週改めて思い出していけるといいですね。
今週のキーワード
脳の深呼吸