おとめ座
人間嫌いをほぐす
グレゴリウスの奇跡
今週のおとめ座は、トーマス・マンの小説『選ばれし人』のグレゴリウスのごとし。あるいは、たましいの充電を行動力に転換していくような星回り。
双子の兄妹から生まれ、自身もまた再会した実の母と結婚するというオイディプス王と似た境遇に陥ったグレゴリウスは、みずからの罪(明らかに彼の責任ではないが)をあがなうために湖の真ん中にある島で暮らすことを決意します。しかし食べ物が十分に取れなかったために、17年にも及ぶ島での暮らしの中でハリネズミほどの大きさに縮んでしまいました。
この主人公は“人間嫌い”の象徴であり、人と距離を置きたいという心理の奥に、自分自身に向けられた憎しみを隠し持っていました。しかし物語はここから急転します。
ローマ教皇が亡くなり、ふたりの老人が啓示により次の教皇は湖の真ん中の島にいると知ります。小さくて剛毛の生えたグレゴリウスにひどい嫌悪と混乱を感じつつも、陸へと連れ出す運びとなったのですが、ここで奇蹟が起きます。
グレゴリウスが「汝を許す」という言葉を自分自身に向けて唱えると、陸にあがるやいなやもとの人間の姿となり、史上最も素晴らしい教皇となったと言うのです。
14日におとめ座から数えて「愛すること」を意味する5番目のやぎ座にある木星・冥王星に改めて焦点があたっていく今週のあなたもまた、自分自身を許し、愛する勇気をもつことという大きなテーマに直面していくことになるでしょう。
自分を見つけること
言葉を変えて言えば、今週のおとめ座は「人が最も関心を持って眺めるのは人」なのだということを改めて思い出していくことになるかも知れません。
自分でも気づかないうちに家族や社会や友人、パートナーに託され、既に共有している自覚さえなくなって、もはや自分でもそれを追うのが当たり前になっていた夢…。そういうものに、心当たりはないでしょうか?
もしすぐに思い当たる節がなくても、ここで覚えておいてほしいのは、「長いあいだ夢を見過ぎると、その夢にかならず復讐される」ということ。長いこと雲の中を進むことになった飛行機乗りは、雲が道を覆い隠し、自分を外へ出られないようにしているという事実にどこかで気付かねばなりません。
ただし、そうした復讐をしかと受けとめた上で、それでもなおと顔をあげ先を見据える者は、夢のその先へと進んでいくことができます。
今週のあなたは、自然と「自分の人生を生きるのは誰か?」ということを改めてみずからに問いかけていくことになるでしょう。それが自分を見つけるということでもあるのです。
今週のキーワード
悪い夢のその先へ