おとめ座
まじめを遊びに変えていく
遊びをせんとや生まれけむ
今週のおとめ座は、ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』のごとし。あるいは、遊びとまじめの適度な緊張関係を楽しんでいくような星回り。
「ホモ・ルーデンス」とは「遊ぶ人」を意味するラテン語で、オランダの歴史家ホイジンガが1930年代に65歳のときに書いた「遊び」についての論考であり、現代文明に対して「遊び」の精神を失った堕落状態として警鐘を鳴らした思想書でもありました。
人類は「知恵ある人」を意味する「ホモ・サピエンス」とされる一方で、「社会的な動物」「理性をもつ動物」「政治的な動物」「道具をつくる動物」などさまざまに定義されてもきましたが、「まじめ」の権化であったナチズムへの批判を念頭に置きつつ、ホイジンガが「遊びは文化よりも古い」と喝破するのです。
まじめは技術編重主義とも言い換えることができますが、それはそのまま明治維新以降、富国強兵・殖産興業の号令のもとに突き進んできた日本という国の基本方針でもありました。
ホイジンガは文化というものは「遊び」だけでも「まじめ」だけでも生まれず、両者のバランスが取れたときに初めて育ってくるものであると述べましたが、それは日本人にとってどれだけ遊び上手になれるかこそが鍵なのだという課題を今もって鋭く突きつけているように思います。
7日におとめ座から数えて「解放と拡張」を意味する3番目のさそり座で、満月が起きていく今週のあなたにおいてもまた、強すぎる現実にどれだけそれに相応しい「虚構性」を重ねていけるかがテーマとなっていくでしょう。
精神的化粧品として
例えば、私たちの性生活には三つの側面があるように思います。一つは、子作りを目的とするもので夫婦間に限定されるもの。もう一つが人間的なつながりを感じるためのコミュニケーションの延長線だったり、愛情表現としての性行為。そして後の一つが、快楽という通路を介して行われる遊びや、文化としての存在するもので、とうぜん自分一人でも可能です。
仮に映画を見たり、音楽を聴いたり、詩や小説を読むことが心に栄養を与え、精神に化粧を施していくことだとすれば、性生活もまた「精神的化粧品」の側面があることは疑いようがないはず。
そうであるならば、寺山修司が『青女論』で述べたように、「たのしいセックスができることは、ダンスや歌がうまかったり、絵にすぐれていたり、演技が上手だったりするのと同じようにその人の教養であり、才能でもあるべき」なのだと思います。
今週は、とかく「まじめ」に考えられがちなものをほど、ひとつの化粧品とみなして、それで遊んでみるといいでしょう。
今週のキーワード
アポリネール『若きドン・ジュアンの冒険』