おとめ座
想像し続けよ!
憎まれっ子世に憚る
今週のおとめ座は、浜辺の孤独な少年のごとし。あるいは、孤独な作業を通じてなにかに到ろうとしていくような星回り。
アテネの大雄弁家と称されたデモステネスは、子供の頃、言葉をどもる癖があってどうしてもなめらかにしゃべることができなかったといいます。
それでも、偉大な政治家になろうと決心したデモステネス少年は、海辺に行って口に小石を含むことで、波の音と口の中の異物というどもり以上の障害をあえて自分に与え、大声で演説の練習を行うことで、はっきりと人に話の内容を伝えられるように訓練していったのだそう。
傍から見ればまったくもって不審人物ですが、もし波の音がザアーザアーと聞こえてくる浜辺を、ブツブツどころではない大声で、何やら口元をもごもごさせながら演説しつつ早足で歩いていく少年が目の前にいたら、どうしたって嫌いにはなれないでしょう。
彼はもともと身体が弱く、子供の頃に「柔弱な笛吹き」を意味する「バータロス」というあだ名で呼ばれていたそうですが、それももしかしたら先の訓練のせいかも知れません(当時のアッティカでは肛門のことも「バータロス」と呼んだ。現在の英語だと「アスホール」であり、スラングとしては「嫌な野郎」という意味でもよく使われる)。
3月22日に試練と課題の星である土星が、おとめ座から数えて「心と身体を健全化」を意味する6番目のみずがめ座に入っていくあなたもまた、みずからの心や身体のエネルギーの使い方や無理や無駄について、見直し改善していくことがテーマとなっていきそうです。
二つの現実
現実にはつねに二つの姿があります。ひとつは「ありのままの現実」であり、もうひとつは「のぞましい現実」。人が歌や神話のなかに見出そうとしてきたのは、つねに「のぞましい現実」への足がかりであり、そこで初めてやがて自分が実現することになる現実のイメージを得るのです。
よく「自分が何をやりたいのか分からない」という人がいますが、そういう人は「ありのままの現実」で既に満足しているか、そもそものぞましい現実のイメージの見つけ方を知らない。あるいはイメージはあるけれど一歩踏み込んでいくだけの気力がないのか、自分がどの状態にあるのかを、きちんと認識しておかなければなりません。ただ、少なくとも「憎まれっ子世に憚る」のにはそれなりの理由があるのだということ。
いずれにしても、私たちはイメージの中で一度経験したことのある現実にしか近づくことはできないのです。過去を美化するのも、未来をイメージするのも、同じ想像力の働きですが、それをどちらに振り分けていくのか、今週はそこを自覚的になってみてください。
今週のキーワード
イメージ筋を鍛える