おとめ座
だんだん広がる
やすらぎの感覚
今週のおとめ座は、「海に入ることを急がず春の川」(富安風生)という句のごとし。あるいは、日常生活にゆっくりとやすらぎを引き入れていくような星回り。
春になると、冬のあいだ凍結していた水が溶けていっせいに動き出す。水量が豊かになった川の流れは、日の光を反射させながらゆっくりと河口へとくだり、海へと出ていく。 掲句はそんなのどかな春の光景を想起させてくれますが、「海に入ることを急がず」という表現には、おそらく作者自身が人生を通してたどり着いた境地を重ねているのでしょう。
その意味で、やすらぎというものもまた、長きにわたる修練や血のにじむような努力の末にやっとたどり着ける境地に他ならず、たとえば「海」のように、本当は一度知ってしまえば二度と他の何かと間違えるはずのない感覚なのかも知れません。
20日におとめ座から数えて「小さな眠り」を意味する8番目のおひつじ座へ太陽が入り、春分を迎えていく今週のあなたもまた、慌てず、急がず、間違わず、夢の中で夢を見ていることを思い出すつもりで、やすらぎをじんわり意識に広げていきたいところです。
スエズ運河の開通
今週のおとめ座の星回りは、どこか「スエズ運河」の開通を思わせます。地中海と紅海を結ぶスエズ運河は、古代から計画案が在りつつ何度も頓挫した末に、多大な時間と労力をかけて19世紀後半にようやく開通した人工運河で、今では世界の流通を支える重要航路。
今週のあなたもまた、そうした開通の瀬戸際にあるのだとイメージしてみてください。そして孤立した内陸地帯でさまよっていた自身の感情や考えを、広い海へと解放していくチャンスはすぐそこに迫りつつあり、あなたに希望をもたらす日々のささいな材料のひとつひとつが誘導灯となって“航行”を導いてくれるはず。
ただ同時に、そこでは自身を慎重に海へと方向づけていかなければなりません。
特に過去への固執や、一般的な慣習にただ従うだけの怠惰には気を付けてください。今週あなたが試されていく分水嶺は、広い海へと出るはずが元の湖に逆戻りしていたり、途中で座礁するリスクを避けるためにも、身体的・社会的・霊的に自らがどこへ行こうとしているのか、どこまで醒めた目でそれを観察していられるかです。
今週のキーワード
固執と怠惰という二大亡霊