おとめ座
皮肉と哀傷
革命とは何か
今週のおとめ座は、「ぎなのこるがふのよかと(生き残ったのが運のいい奴)」という言葉のごとし。あるいは、滲み出るアイロニーを包みこんで優れた詩に変えてしまうような星回り。
冒頭の言葉は、社会の底辺に革命の起点を求めて独自の運動を展開していった詩人思想家・谷川雁の「革命」という詩の最後の一行です。
作者は自分のことを革命家だと思っていたのでしょう。けれど、その意味するところが普通と少し違っていた。
つまり、社会的有機体の発展には違いないけれど、即進歩を意味するのではなく、有機物の死滅の相を含んだものでもあり、どこかかなしいを噛みしめるようなものだったのでしょう。
死んでしまったら、それは仕方ない。転向してしまったら、それも仕方ない。生き残ったのが運のいい奴。これは自分自身への皮肉でもあったに違いありません。
2019年から2020年に移っていく今週のおとめ座もまた、そんな自分自身への皮肉をかなしさで包みながら、それでも生きて言葉を紡いでいくことでしょう。
瑕のあるとびきりの黄昏
以下、「革命」という詩の一部を引用します。
「おれたちの革命は七月か十二月か 鈴蘭の露したたる道は静かに禿げあがり 継ぎのあたった家々のうえで 青く澄んだ空は恐ろしい眼のようだ 鐘が一つ鳴ったら おれたちは降りてゆこう ひるまの星がのぞく土壁のなか 肌色の風にふかれる恋人の 年へた漬物の香に膝をつくために 革命とは何だ 瑕(きず)のあるとびきりの黄昏(たそがれ) やつらの耳に入った小さな黄金虫 はや労働者の骨が眠る彼方に ちょっぴり氷蜜のようにあらわれた夕立だ」
この「継ぎの当たった家々」とは、肉体労働者たちが住む炭鉱住宅のこと。暗喩のひとつひとつが、彼にとって革命とはどんなものだったのかを物語っているようです。
今週のキーワード
詩的革命